
トランプ米大統領が、輸入自動車に対して25%の関税を課す可能性を示唆する中、この関税措置が現実化した場合、韓国の自動車生産と輸出に致命的な打撃を与えるとの分析が国策研究機関から示された。対米輸出は最大20.5%減少するとの見通しが出ており、業界の被害を最小限に抑えるためにも、米国市場への過度な依存と輸出中心の販売構造を根本的に見直すべきだという提言が相次いでいる。
韓国政府も、「輸出の稼ぎ頭」とされる自動車産業が直撃を受けることを懸念し、変化した通商環境への対応に苦慮している。韓国GMの撤退説が再び浮上するなど業界の危機感が高まる中、政府は来月中に自動車産業に対する包括的な対応策を発表する。
◇米国への依存構造がリスクに
韓国産業研究院(KIET)システム産業室長のキム・ギョンユ氏は最近、国会で開かれた「米国新政権下の自動車通商環境への対応に関する懇談会」で、自動車通商の動向と対応策を発表した。
キム室長は、第2次トランプ政権下では韓国の対米貿易黒字の大きさを理由に、非関税障壁の緩和や輸入拡大などの圧力が予想され、自動車産業全体の生産と輸出戦略の見直しが必要だと強調した。
産業研究院によれば、米国が自動車に25%の関税を課した場合、韓国からの対米輸出は規模効果で16.3%、代替効果で4.2%、合計20.5%減少すると予測している。
また、完成車メーカーが関税負担を回避するために米国現地生産を増やせば、韓国国内の生産台数は年間70万~90万台減少する見込みだ。
韓国GMは昨年、昌原(チャンウォン)と富平(プピョン)工場で49万6000台を生産したが、そのうち国内販売はわずか2万2899台、全体の4.6%に過ぎない。対米輸出は41万8782台で、全体の84.4%を占める。産業研究院は「親会社のGMは米州市場に販売が集中しており、他市場での代替が困難だ」と分析している。韓国GMが輸出縮小によって撤退するリスクが高まっていると懸念を示した。
現代自動車と起亜自動車は、米国内で年70万台の生産能力を持ち、さらに最大120万台規模まで拡張する計画を進めている。これは昨年の米国販売台数の約70%に相当する。大半が現地生産に切り替わるため、国内工場の稼働は縮小を余儀なくされる。
国内生産が減少すれば、部品メーカーなど自動車産業全体のサプライチェーンに広範な影響を及ぼすことは避けられない。
◇「関税爆弾」に業界と地域経済が危機感
トランプ政権の「米国第一」通商政策が本格化する中、自動車業界では当初10%程度の関税を想定していたものの、25%という高率の関税案が浮上したことで「関税爆弾」への警戒感が急速に高まっている。
特に韓国GMは、生産台数の大部分を米国に輸出しているため、関税負担を避けるために韓国工場を撤退させる可能性まで指摘されている。主な自動車生産地である仁川(インチョン)や蔚山(ウルサン)など地域経済への悪影響も懸念されている。
韓米自由貿易協定(FTA)に基づき無関税で輸出してきた韓国車が、突然25%の関税を課されれば、米国現地生産車両に対する価格競争力を失う恐れがある。
産業研究院は「国内メーカーの営業利益率は8~9%と高い水準にあるが、追加関税の影響で価格引き下げによる対応は困難だ。25%の関税は国内生産と輸出にとって致命的な打撃になる」と警告した。
昨年、韓国の完成車メーカーが米国に輸出した台数は計143万台で、全体輸出台数279万台の半数以上を占めている。関税が課されれば、価格はその分引き上げられ、結果として現地生産への移行が加速するため、韓国内の生産はさらに減少し、中小部品メーカーへの波及も避けられない。
特に国内生産比率が高い環境対応車(エコカー)は深刻な影響が懸念されている。ハイブリッド車は85%、電気自動車は97%以上が韓国内で生産されているためだ。
産業研究院は「トランプ政権の政策は不確実性が高く、新規投資や対応策の立案が難しい」と分析したうえ「現地生産拡大と輸出市場の多様化が求められる。米国市場への過度な依存から脱却し、輸出中心の販売構造を根本的に変えるべきだ」と提言している。
具体的な対応策としては▽造船・LNG開発などと連携した自動車産業への関税適用回避交渉▽海外からの復帰を検討する部品メーカーへのインセンティブ拡充▽中国を排除した自動車供給網の構築と国内生産による第三国向け輸出の推進▽韓米FTAの原産地規定強化への対応として国産部品の調達拡大――を挙げている。
韓国政府も韓国GM撤退説など国内自動車産業の根幹が揺らぐ事態を防ぐため、4月中に包括的な対策をまとめて発表する。産業通商資源省関係者は「対外的な不確実性がしばらく続くと予想されるため、自動車産業への影響を最小限に抑えるための精密な対策を検討している」と述べた。
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