妊娠計画について話すと最終的に脱落
「火星から来た男、金星から来た女」。かつてのベストセラーのタイトルが示す通り、男女の立場は同じではありません。一方で、票集めのためにジェンダー摩擦をあおる大統領選挙を美しいとは思えません。就職活動で、互いに差別の被害者だと主張しあう「イデニョ」(20代女性)や「イデナム」(20代男性)らの考えを聞いてみました。(最終回)
「妊娠計画があると合格するのは難しいでしょう」
20代後半の女性チョさんは昨年末、転職面接を控え、その会社に勤めている知人にアドバイスを求めたところ、このような話を聞いた。実際、チョさんは面接過程で職務経歴よりは妊娠と出産計画に関する質問を多く受けた。今年末に妊娠を計画しているチョさんは率直に話し、最終面接で脱落した。彼女は「自分の経歴が断絶するようで苦しかった」と打ち明けた。
大統領選の投開票を3月9日に控え、女性家族省の廃止など「逆差別」を訴える男性寄りの公約があふれていることに対し、「イデニョ」は「現実とかけ離れた感じがする」と話す。彼女たちは政府と民間の男女平等に向けた努力にもかかわらず、女性は依然として韓国国内の職場で差別を受けていると糾弾する。昨年、東亜製薬における採用時の性差別が問題化してから1年余りたったが、相変わらず就職市場では似たようなことが繰り返されているからだ。
女性就活生、イムさん(27)は「書類と筆記で合格しても面接で落ちたことが何回もある。1次書類(ブラインド)、2次筆記、3次面接の順だが、性別を見て評価できる余地が生じる高次の選考で、ますます合格率が落ちている」と話した。
イムさんの主張は統計でも確認できる。雇用労働省が、2017年の新規採用人数が10人以上で、最終合格者のうち女性の割合が30%未満の91の公共企業体の採用段階別(志願→書類→筆記→面接→最終)合格者の実態を調査したことがある。その結果、志願者のうち書類選考に合格した割合は女性が男性の101%とよりわずかに高かったが、面接後には女性合格者の割合が男性の69%と大幅に下がった。
民間企業も例外ではない。昨年7月の求人求職マッチングプラットフォーム「サラミン(saramin)」によると、企業473社を対象に「採用時に好む性別」について調査した結果、回答企業の32.8%が「相対的に、より好む性別がある」と答えた。これらの企業は平均的に男性(74.2%)を女性(25.8%)より好むとした。
インターンをしながら就職の準備をしている女性パクさん(27)は「企業の中には、最初から男性だけ採用する場合もかなりある。形式的には軍加算点制が廃止されたが、依然として企業でも男性、さらに海兵隊など大変な軍隊生活を経験してきたと言えば、もっと評価する傾向があるようだ」と話す。パクさんは「学校勤労奨学生の募集も女子は秘書業務や補助業務だが、兵役を終えた男子は行政業務などになることもある」と指摘する。
2021に民間公益団体「職場カプチル(パワハラ)119」が、与党系の基本所得党のヨン・ヘイン(龍慧仁)議員を通じて雇用労働省から受け取った資料によると、採用手続き法が改正された2019年7月から、同省に寄せられた法律違反559件のうち338件(60.5%)が、職務遂行に必要でない容姿や身長などの身体的条件、婚姻の有無や出身地域などの基礎審査資料を要求していた。捜査機関に通報されたケースはなく、半分にも満たない件数が過料と是正命令にとどまった。
先述のチョさんは「業界が狭く、自分の評判が落ちるのを恐れ、差別された事実を知らせるのが嫌だった。申告しても勧告程度にとどまるなら、私のように申告をためらう人が多くなるだろう」と話した。
◇「同期男性と仕事が違う」
厳しい就職のハードルを越えた後も問題だ。まだ昇進などにおいて相対的に女性のチャンスは少ない。女性家族省が発表した「2020統計で見る女性の暮らし」によると、2020年第1四半期基準の事業報告書を提出した2246上場法人の役員3万2205人のうち、女性は5.2%(1668人)だけだった。
銀行で働く女性チャンさん(29)は「入社の際、全員同じ職務で入社したにもかかわらず、同期の男性たちが担当する仕事が違う。業務に必要な資格があっても、窓口で客を迎える業務はほとんど同期の女性たちを中心に発令され、昇進と業務を学ぶ機会が多い職務には、男性の同期たちから先に異動する」と述べた。
チャンさんが勤める銀行は、学歴や性別によって決まった初任給を出発点に、勤続年数によって給与がアップする号俸制を選択している。軍隊に入った男性社員は、同じ年に入社したにもかかわらず、さらに2年間待遇を受けているとチャンさんは教えてくれた。
「軍隊に入った20代の男性が、十分な補償を受けていないということは知っているが、これは国家レベルで政策的に補完しなければならない問題だ。私企業の年俸が職務の量ではなく、単に軍隊に行ってきたという理由だけで決定されるというのが常識的に理解できない」と語った。
就職を準備している女性大学院生パクさんはこう話す。
「友達の間では、韓国で女性として生まれたので『今回は人生を間違えた』という自嘲的な声が出ている。就職を準備している者の立場では、候補たちの公約は大きく響かない」
(おわり)
「韓国の20代女と男、それぞれの事情」はMONEY TODAYのユ・ソニル、ユ・ジェヒ、ユ・ヒョソン、カン・ジュホン、キ・ソンフンの各記者が取材しました。