韓国勢が破竹の勢い
スマートフォンから自動車まで、あらゆる電子機器に内蔵されている半導体は「産業のコメ」と呼ばれます。私たちの生活に欠かせないこの半導体をめぐり、米国と韓国が今、ギクシャクしています。日本も加えた3カ国の思惑をわかりやすく解説します。(シリーズ4/計6回)
韓国の半導体産業は1960年代、米国企業の後工程を受け持っていたころを出発点とする。韓国初の全工程会社は、モトローラ出身のカン・ギドン(姜基東)博士が1974年、京畿道(キョンギド)富川(プチョン)に設立した「韓国半導体」だ。
1983年にはサムスン電子と現代電子がDRAM事業に進出。その3年後、日米で結ばれた半導体協定によって日本が萎縮したすきに、韓国勢がチャンスをつかんだ。言い換えれば、日米が神経戦を繰り広げている間、厳しいけん制を受けずにスタートラインに立ったということだ。
それから韓国勢は破竹の勢いを示す。サムスン電子は現在、世界の半導体1、2位を米インテルと争い、3、4位付近をSKハイニックスが行き来する。
そして今、米政府の矛先は、韓国勢に向けられている。サムスン電子やSKハイニックス、さらには台湾積体電路製造(TSMC)などの半導体企業に圧力がかけられているのだ。
米商務省は2021年9月、自国の自動車やIT企業への半導体の安定供給のためとして、半導体メーカーに顧客情報などを提出するように要求してきた。米側は国防物資生産法(DPA)を動員して情報提出を強制する案まで検討していた。強硬姿勢はいったん引っ込めたようだが、超大国・米国がいつまた考えを変えるかわからない。
オーストラリアとフランスが結んだ原子力潜水艦の購入契約を横取りしたように、米国は自国の利益を最優先にする。そんな国が、世界の警察として「善良な管理者」の役割だけを果たしている――わけではないことを、誰もが知る。半導体部門も同様だ。成長しすぎた日本の半導体企業を一瞬にして吹き飛ばした記憶が依然残っている。
韓国企業は「絶対的な強国」である米国の圧力に勝てるだろうか。米国の無理な要求に耐えることは容易でない。通商における米国の圧力戦術は、弱小国に対して無慈悲である。特に日本、韓国、台湾など、米国が「自国の軍事力の傘下にある」と認識する国・地域に対しては、なおさらだ。
(つづく)