2024 年 5月 18日 (土)
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[KWレポート] 尹錫悦政権100日の成績表 (4)

国益・実用のための「経済安保」通商戦略

大統領室庁舎で開かれた臨時閣議を主宰し、資料を見るユン大統領(大統領室提供)©news1

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が先月17日で就任100日を迎えました。保守系政党「国民の力」入党と党内予備選挙、大統領選挙・就任という「短くて太い」政治経験の中で試行錯誤をしてきました。ユン政権の前途を考えてみました。(最終回)

ユン政権は、米中の競争過熱や新型コロナウイルス禍などによるグローバルサプライチェーンのブロック化や、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格・原材料が急騰するなど、容易ならざる経済状況に置かれている。グローバルインフレの影響の中で、勢いに乗っていた韓国の貿易収支は、この4カ月間赤字を出し、自国優先主義に基づいた通商環境は、過渡期に入った。

冷酷な世界経済秩序で徹底的に「国益」と「実利」を見極めなければならない時だ。政府の状況認識もさほど変わらない。「国益」と「実用中心」基調の貿易・通商戦略を旗印に掲げた。

北京で2013年、バイデン米副大統領(当時)と握手する中国の習近平国家主席(ロイター)©news1

◇米中経済覇権争い「徹底的に国益・実利の土台の上に」

従来の「安保戦争」は、銃声のない「経済戦争」に変わった。特に米中経済覇権争いが激化し、韓国は選択の岐路に立たされている状況だ。

「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」や「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」、また最近は、米国の主導による米日韓台の半導体供給態勢の枠組み「チップ4」への参加まで、政府の決断が要求される場面が続く。

CPTPPやIPEFと関連し「経済安保」を通商政策の公約に掲げたユン政権の立場は、確固たるものだ。韓国は、経済協力体制の究極的な指向点をサプライチェーンの安定化ということに主眼を置きつつ、中国との関係に気を遣いながら、主要参加国として主導的な姿を見せている。

実際、インド太平洋地域の協力強化のためにスタートしたIPEFは貿易、サプライチェーン、クリーンエネルギー・脱炭素・インフラ、租税・反腐敗など四つの「柱」で構成される。韓国はこの四つの柱全てに協力することを検討中だ。

問題は最近懸案として浮上した「チップ4」だ。米国が主導する半導体サプライチェーン協議体であり、「技術同盟」と見ることができる。米国と中国の半導体戦争とはいえ、半導体分野のサプライチェーンの安定化を図ることができるという面で、韓国としては悪くない選択だというのが一般的な世論だ。政府もこのような認識で参加を肯定的に検討してきた。

ただし、在韓米軍への最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」配備に中国が猛反発したことの二の舞いを懸念する立場から、慎重な姿勢を求める声もある。

仁荷大国際通商学科のチョン・インギョ教授は「韓国のサプライチェーンの70~80%は中国が占めている」とし「中国との関係をどのように構築するかが、当然中心とならざるをえない」と話した。

チョン教授は「現在、通商の変化は過渡期的性格を帯びている」とし「この期間、対中関係を短・長期的にどのように持っていくかに対する問題が差し迫っている」と付け加えた。

また「グローバル秩序が変化しているが、今後、私たちはどんな方向に進むべきかシナリオを作り、それに伴い対中関係及び新秩序に対応する国内政策をどのようにするかについて、大きな絵を描かなければならない」と強調した。

産業研究院のキム・ゲファン先任研究委員は「中国は米国の牽制に対抗し、総力を尽くして(電子部品などの)国産化に力を注ぐ」とし「この過程で私たちは、競争関係にある中国産業の技術変化を注視する必要がある」と助言した。また「収集された技術情報を体系的に分析し、関係省庁や業界に効率的に伝えるシステムも構築しなければならない」と付け加えた。

2021年11月17日午前、京畿道の尿素水のスタンドで、職員が尿素水を車両に注入している©news1

◇「第2、第3の尿素水事態」を防ぐために

グローバルサプライチェーンの危機を経て、輸入多角化のための対外通商国との戦略も重要だが、何か起きると影響を受けやすい「輸入脆弱品目」の厳重な管理が急務だという指摘もある。

政府もやはりこのような判断により「産業とサプライチェーン連携型通商」を推進中だ。

これは鉱物・原材料部局や先端産業・技術局、アジア太平洋中心圏域など、国家類型別のオーダーメード型協力を通じ、サプライチェーンの強化を図ることが中心となる。

韓国の輸入品目に対する徹底したモニタリングを通じ、脆弱品目を把握し、今のようなサプライチェーン不安時に即応できるよう、主要輸入国の管理や代替輸入国の発掘などをあらかじめ進めておき、混乱を回避するのが戦略の大きな狙いだ。

米中貿易紛争▽日本の半導体素材輸出規制▽排ガスを浄化するのに使う尿素水不足▽新型コロナウイルス感染症パンデミック▽半導体不足▽ロシアのウクライナ侵攻――を体験する過程で、サプライチェーンを安定させることは、韓国政府にとってますます重要だと認識されている。

これまでは個別企業のレベルで扱われ、市場機能を通じて自然に解決されたサプライチェーンの問題は、今や産業競争力、外交・安保及び社会の安定に向けた重大な国家政策課題になった。

韓国の場合、サプライチェーン脆弱品目の半分以上が中間財で、中国に対する依存度が高い。半導体・ディスプレイの場合は日本に資本財依存度が偏っている。サプライチェーン脆弱品目は、主力産業の生産に直結しており、2次被害が大きくなる構造だ。

対処するには、より正確な分析が必要だ。

産業研究院が発表した「経済覇権競争時代の戦略的自律性のための産業通商戦略」によれば、サプライチェーンのレベルで韓国の対日本および対中国脆弱品目の持つ特性は、異なっている。

対日脆弱品目は、国内産業クラスター(集積)の形成の中心部に位置し、産業構造全体に波及する力が大きいことがわかった。これは、対日脆弱品目の多数が、国内産業クラスター形成のチョークポイント(急所=グローバルサプライチェーンの中心的な原料・部品・技術などを意味)になるものとみられている。

半面、対中国脆弱品目の大多数は国内産業クラスター形成の周辺部に集中しているため、最終材ないしは1次加工品の産業的特性を示した。

産業研究院は「脆弱品目の国内波及に対応するための政策は、国内産業構造に占める脆弱品目の地位を元に模索しなければならない」と強調する。

そのような面で、政府の状況認識には専門家も共感する。ただ、政策を推進するために、より細かい注文をつけた。

仁荷大国際通商学科のチョン・インギョ教授は「貿易統計値の作成から脱落しかねない、その他の細部脆弱品目に対する細かいデータの確保も必要だ」と言う。「例えば、前回の尿素水問題で経験したが、尿素水は関連データに分類されている。きちんとモニタリングができず、混乱も大きかった」と指摘している。

(おわり)

「尹錫悦政権100日の成績表」はnews1のキム・イルチャン、ハン・サンヒ、キム・ヘジ、イ・ジョンヒョンの各記者が取材しました。

©news1

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