2024 年 5月 18日 (土)
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[KWレポート] 中国の“赤い規制”…習近平主席の青写真は何か(3)

企業規制は体制安定と富の分配の一石二鳥

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中国から規制のニュースが絶えず聞こえ、いずれも過激で、対象も多様です。しかし、よく見ると、方向はひとつのようです。14億人の中国はどんな青写真を描いているのでしょうか。(シリーズ3/計4回)

金融と連携したビックテックのプラットフォーム戦略も中国共産党を刺激したという。中国人は「~ペイ」に代表される決済手段から、生活の随所でプラットフォームへの依存現象が深まっている。プラットフォームが心変わりすれば、国家システムに重大な支障をきたす恐れがある。それは権力だ。

配車サービス大手「滴滴出行」に対する圧迫も、プラットフォームの観点から理解できる。滴滴出行は中国各地の道路や利用者の動線、時間、生活パターンなどが細かく刻まれたビッグデータであり、交通プラットフォームだ。米国で上場された以上、株主らからビックデータを共有させるよう要求されかねず、交通制御手段として利用されるおそれがある。

米国版、英国版「情報セキュリティー法」が稼動する可能性があるという不安も作用したようだ。中国は同法により、国内外を問わず、中国領土内にサーバーを置くすべての機関が活動の過程で得たデータを流出できないよう統制している。さらに一歩進んで、中国政府はサーバーにアクセスする権利を持っており、政府の要求に応じなければならない。

企業規制は体制安定と富の分配という一石二鳥の効果につなげられる。「共同富裕」自体が社会主義の核心理念であり、分配というのは実質的行為だ。汗をかいた分だけ持っていく公正な社会を作りながら、国が分配の調整役を果たす。同時に、それでもカネを多く稼ぐ側が寄付をしなければならないというのが「共同富裕」の実行方法だ。

これはすなわち、中間層の可処分所得の増大につながる。堅調な内需と投資拡大の条件であり、双循環経済(国内と国際の二つの経済循環)の重要な点でもある。これは米国の制裁に対抗する独自の生存戦略で2019年に登場した理論だ。

それまで習近平国家主席(中国共産党総書記)は、2020年までの小康社会の実現を至上課題に掲げていた。そして昨年6月、「小康社会を作った」と宣言した。根拠は、2020年までに国内総生産(GDP)を2010年の2倍に増やすという約束を守ったということだった。実際、中国の1人当たりのGDPは、2010年の4551ドル(約50万円)から2019年は1万276ドル(約113万円)に増えた。

しかし昨年、全国人民代表大会(全人代)で李克強首相が「14億の人口のうち6億人の月収が1000元(約1万7000円)に過ぎない」と述べ、小康社会の実現が中途半端だった事実を打ち明けた。党の積極的な介入により、分配という手段を使った、より根本的な小康完成と双循環経済推進の予告でもあった。

(つづく)

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