これまでの流通事業と、今後の成長動力となる新事業に、大規模な投資を断行する。そして「流通名家」としての地位を再び固める――これが韓国ロッテグループのシン・ドンビン(辛東彬、日本名・重光昭夫)会長の計画だ。ロッテはこれまで、今後5年間に37兆ウォン(約3兆8300億円)規模の投資をして地域経済を活性化し、産業生態系に活力を吹き込む、と宣言した経緯もある。
◇レゴランド危機
ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は今年8月12日、光復節(8月15日・日本による植民地支配からの解放記念日)を前に、シン会長の特別赦免(恩赦)を認めた。贈収賄事件で有罪となり、執行猶予中だったが、その刑の執行が免除されることになった。
ある財界関係者は次のような見方をする。
「特別赦免を契機に、シン会長の行動範囲が変わった。流通事業の再整備を終え、今後はロッテの成長動力となる新事業に攻撃的な投資を断行する。そして、グローバルビジネスネットワークの復元に集中するだろう」
ただ、グループ圧迫の始まりになった「ロッテ建設の流動性危機」に対する懸念の払しょくは急ぐようだ。
韓国江原道(カンウォンド)のテーマパーク「レゴランド・コリア」の資産流動化企業手形(ABCP)不渡りを受け、ロッテ建設の短期借入金の返済が困難になった。
グループの負担が重くなり、18万人の役員・職員はもちろん、投資家の不安が増幅する。 ロッテ建設に対し、グループ系列会社が全方位で支援に乗り出す事態になっている。
◇“一時的な衝撃”
ロッテ建設の偶発負債(現実に発生しているわけではないが、将来的に一定条件が整えば生じ得る債務)は6兆~7兆ウォン程度と推算されている。一方、グループ全体の現金性資産は15兆ウォンを超えるレベルであり、十分に耐えられる。“一時的な衝撃”というのがロッテグループの立場だ。
この過程で「40年ロッテマン」と呼ばれたロッテ建設のハ・ソクチュ代表が退き、ロッテ持株経営改善室長のパク・ヒョンチョル氏に代表が交代するという「ワンポイント人事」の超強硬策を断行したりもした。
シン会長も流動性危機からの脱出を支援するため、11億ウォン規模の私財を投入して「責任経営」の意志を示した。危機に対処するため、11月中・下旬に発表する予定だった年末定期人事までも12月中旬に先送りした。
シン会長は今年7月に開かれた下半期のVCM(Value Creation Meeting、旧社長団会議)で次のように語っている。
「良い会社は、世界市場で競争できるグローバル競争力を持つ。それを備えるためには、既存の枠組みから脱却し、事業のやり方を根本的に変えることが必要だ」
財界関係者は「流動性危機という不安要素があるが、シン会長は『ニューロッテ』の方向性は堅持するだろう」とみている。(つづく)
(c)NEWSIS