最近、タイ旅行業協会の副会長が日本のメディアに対し「韓国の観光地は一時的なブームに過ぎない」「日本や中国の方が優れている」と発言し、韓国で観光業界だけでなく多くの人々が怒りをあらわにした。これに対し、韓国観光公社は直ちに抗議し、協会側が「個人の見解による誤解を招いた」と謝罪したことで、問題は一旦収束した。しかし、この発言の背景には、タイ側の韓国に対する積もり積もった不満がある。
昨年末から、タイ国籍者の間で電子旅行許可制度(K-ETA)を利用して韓国に入国しようとしても、入国審査で追い返される事例が増加している。法務省が導入したK-ETAは、タイを含む112カ国の国民に対して無査証で韓国入国を許可する制度だが、昨年10月にはタイの有名インフルエンサー、ビウ・バラポン氏が仁川空港で不法就労者と誤認され強制送還された。この事件をきっかけに、タイのSNSでは「バン・コリア」(Ban Korea、韓国ボイコット)のハッシュタグが広まり、韓国旅行ボイコット運動が加熱した。
法務省は根拠なくタイ人の入国を拒否しているわけではない。タイは韓国における不法滞在者数が最も多い国で、その数は推定15万人に達する。不法滞在者の多くは、違法なマッサージ店や薬物取引など、裏社会で活動しているとされる。しかし、このような事態に対しては、入国の目的が観光なのか就労なのか、正確に判断する「データを基にした対策」が必要である。適切な対策を講じた後でも不法滞在が続く場合には、さらに厳しい取り締まりが求められる。
2022年には41万1270人の不法滞在者がいたが、取り締まりに当たったのはわずか302人だったというデータもある。1人の担当者が1362人の不法滞在者を担当しているという状況では、効果的な対応は難しい。今こそ、韓国観光公社と文化体育観光省は、タイ市場に対して韓国のイメージ改善に努めるべきだ。タイ国内で「韓国ボイコット」が広まれば、両国間の関係に悪影響を及ぼす可能性があるからだ。
さらに、2023~24年の「韓国訪問の年」というキャンペーンが展開されているこの時期に、外国人観光客を歓迎すべきなのは明らかだ。タイの副会長の発言は不愉快だが、その指摘の中には韓国観光業界が見直すべき課題も含まれている。韓国が世界で知られるようになったのは、自然の観光資源よりもK-POPやK-ドラマなどの文化資源のおかげであり、これは誇るべきことだ。政府が掲げる2027年までに訪韓外国人観光客3000万人という目標に向け、これらの資源をどう活用するかが今後の課題となる。【news1 ユン・スルビン旅行専門記者】
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