韓国においてバッテリーをめぐる誤解もある。半導体に関連した「国家核心産業」ではあるものの、国内での投資・雇用には向かないという指摘だ。
小さくて軽いという特性から航空機での輸出に適している半導体と異なり、バッテリーは大きくて重い。物流費負担が大きく、顧客企業の近くに拠点を設ける必要があるためだ。
とはいえ、国内投資が進んでいないわけではない。
首都圏集約的な半導体とは異なり、忠清・慶尚・全羅圏を中心に設備投資が進んでいる。雇用は、このバッテリーバリューチェーンに沿って増えるとみられる。
◇マザーファクトリー
中心となるのは、バッテリー3社だ。LGエネルギーソリューションは清州、サムスンSDIは天安と蔚山、SKオンは瑞山にそれぞれ拠点生産施設を設けた。
3社のセル(バッテリーの構成要素)工場は、北米・欧州・中国などに設置される海外新設工場のモデルとなる。いわゆる「マザーファクトリー(Mother Factory)」で、製品開発・製造の中核となる工場と言える。自動生産や効率的な作業を通じ、安定的な生産体制が確立すれば、海外にも設置する計画だ。
海外工場が単純労働者中心である一方で、国内工場は付加価値を高める中核拠点であり、高熟練作業者がメーンとなる。現代自動車グループや日本からのバッテリー需要が高まり、これらの工場の需要も拡大するとみられ、中長期的な追加投資が予想されている。
セルの生産のためには、まず安定した素材の供給が必須だ。バッテリー4大核心素材と呼ばれる陽極材・陰極材・電解質・分離膜をはじめとする多様な素材供給を実現する必要がある。
バッテリー産業の胎動期には、日本や中国の素材会社に依存していたが、最近は国内バッテリーセルの生産が増加し、大規模な素材投資が進む。中国への依存度を下げると同時に、国内の雇用も増える。こうした動きが非首都圏地域を中心に活発化している。
(つづく)
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