韓国では首都圏への人口集中が加速し、「地域消滅」という不吉な言葉がささやかれるようになって久しい。ところが、非首都圏で新たな働き口が生まれ、地方住民の希望になっているのだ。カギはバッテリー(二次電池)だ。国の計画に沿って、数十万件の働き口が忠清(チュンチョン)・慶尚(キョンサン)・全羅(チョルラ)地域を中心に作られる計画も浮上している。
電気自動車(EV)バッテリー生産ラインの場合、低く見積もっても、年間生産量20GWh(ギガワット時)当たり、3000~4000人程度の雇用が可能になる。
電池大手「LGエネルギーソリューション」の忠清北道梧倉(オチャン)工場(25GWh)には約5000人の役職員が勤めている。会社側はこの生産規模を33GWhに拡大する計画で、雇用も大幅に増えるとみられる。
電池大手「サムスンSDI」は蔚山(ウルサン)工場(9~10GWh推定)にLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーの生産ラインを増やす案を検討中だ。
電池大手「SKオン」は5GWh水準の忠清南道瑞山(ソサン)工場の規模を20GWhに増やすことを決めた。
これらバッテリー3社によって1万以上の働き口が地方で創出される見通しだ。
◇「首都圏集中化」を緩和
さらに範囲を広げれば、雇用効果はさらに大きくなる。
陽極材・陰極材・分離膜・銅箔など素材を作る企業、各種装備製作企業もあるためだ。バッテリー3社と同様に、主要素材メーカーはすべて非首都圏を基盤としている。
陽極材と陰極材の両方を作る「ポスコ・フューチャーM」は、世宗(セジョン)、慶尚北道浦項(ポハン)、全羅南道光陽(クァンヤン)などに生産ラインを構築した。陽極材を作る「LG化学」は忠清北道清州(チョンジュ)、「エコプロ」は清州・浦項に工場が位置する。「SKIET」(分離膜)は忠清北道曽坪(チュンピョン)、「SKC」(銅箔)は全羅北道井邑(チョンウプ)、「ロッテエナジーマテリアルズ」(銅箔)は全羅北道益山(イクサン)だ。
バッテリーや素材メーカーの場合▽ニッケル・リチウムなどの主要原料輸入に有利で▽広い工場敷地を確保でき▽EV工場に近い――場所を生産ラインの拠点として選んできた。バッテリー生産ラインが地方に広く分布しているのもこれが理由だ。
バッテリーバリューチェーンが地域の雇用創出を通じ、「首都圏集中化」を緩和する役割を果たしていると言える。
(つづく)
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