中国による韓国の半導体人材引き抜きが最近、巧妙化している。米国の半導体サプライチェーンからの中国排除の動きを意識して第3国に勤務地を設ける懐柔策まで提示したり、開発プロジェクトの成功時に一般会社員の数十倍に達する報酬を約束したりする事例もあるようだ。
◇勤務地は海外の第3国・中立国
韓国のある半導体業界関係者は今年、中国の主要通信会社から転職するよう提案を受けた。同社は子会社を通じて5G産業に適用するためのRF半導体を開発している。
この関係者は「同社が提示した内容の中で最も目立った部分は勤務地。米中葛藤の余波が直接及ばない海外の第3国、中立国で勤務できるようにするという条件を掲げた」という。
こうした条件は、米国の対中輸出規制に備えるための戦略とみられる。
現在、米国は中国の先端半導体技術や製造能力の拡張をけん制するための措置を連日施行している。昨年10月には、自国企業が中国企業に14ナノメートル以下の非メモリーなど先端半導体製造用装備を輸出できないよう規制している。同時に、米国人や永住権者が中国企業の半導体研究開発に関与することにも制限を設けた。
これに対し、一部の中国企業は、米中葛藤の余波を最大限避けるため、近隣国家に法人を設立している。有力経済紙フィナンシャル・タイムズによると、2020年初めから2021年末まで、シンガポールに拠点を置く中国系企業は400社から700社に増加し、昨年末までに1500社に増えたとみられる。
この関係者は「中国企業が米国の戦略物資に含まれた先端半導体分野を開発することが次第に難しくなっている。そのため米中葛藤との関連性が少ない国に法人を設立し、韓国エンジニアを誘致しようとする戦略」とみている。
◇「4億~5億円の報酬」
韓国エンジニアを迎え入れるための報酬も破格だ。
半導体装備業者関係者は「中国の半導体企業が韓国に法人を設立し、人材を採用することが捕捉され続けている」という。
単に多額の報酬を支払うというのではなく、特定の装備開発に対するプロジェクト成功時に40億~50億ウォン(約4億~5億円)の報酬を別途支給するという契約を掲げる事例まであるそうだ。
このように中国企業による韓国の半導体人材確保の意向が強まっている。一方、業界は、人材流出を阻止するための実効性のある対策を整えるのは容易ではない、とみる。
次世代知能型半導体事業団長は「海外企業による離職の提案そのものは必ずしも違法とは言えないため、人材流出をむやみに防ごうとすることも二律背反的だ。韓国の半導体核心人材に対する処遇を改善することはもちろん、人材流出が今後、技術流出につながらないよう格別な教育を施すという努力も必要だ」と指摘している。
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