韓国の歌手IU(アイユー、本名イ・ジウン)が最近、いわゆる「盗作疑惑」で告発を受けた。著作権法違反容疑での告発は、ポピュラー音楽界では異例のことだ。性暴力の場合、被害者による告訴と並び、第三者告発も許されるが、盗作(著作権法違反)の場合は、原作者本人の告訴だけが可能だからだ。同じ親告罪といっても範囲が違う。
◇ターゲットとなった「国民歌手」
今回の盗作疑惑の告発は突拍子もないものだ。それも、業界内の関係者ではなく一般人による告発だ。新曲ではなく過去の曲に対する告発であり、効果や実用面からみても、得るものはあまりない。では、この一般人はなぜこんなことをしたのだろうか。
理由は一つ。世論の喚起だ。IUが今まで出した曲に対しては、数多くの盗作疑惑が提起された。しかし、適切な釈明がないまま見過ごされ、作詞・作曲をした著作権者ではないという理由で沈黙が保たれてきた。
「国民歌手」として定着したIUが、絶大なる人気を武器にして著作権侵害疑惑を疎かに扱う姿勢について、広く議論を巻き起こし、真実をはっきりさせようという狙いだ。
噂や疑惑の提起、ユーチューブによる検証だけでは限界があるとみたのだろう。今回、「告発」という正式な手続きを通じ、世論に問うという手法がとられた。この10年以上続いてきた盗作疑惑について、果たして終止符は打てるのだろうか。
◇“3段ブースター”
IUが新人歌手だったころは、それほど問い詰められることはなかった。当時はミュージシャンという側面より、新人歌手の今後の可能性が注目されていたからだ。
徐々にキーを上げていくテクニックは“3段ブースター”と称される。このテクニックによる曲「Good Day」を思い出すと、みなが、幼い歌手が出すハイトーンに感嘆するばかりだった。
その曲の著作権侵害を疑う人はほとんどいなかった。
(つづく)
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