冬場の新型コロナウイルス感染の再流行を控え、韓国で3~4月の大流行時に起きた「風邪薬危機」が再燃する恐れがあると、保健医療業界から警鐘が鳴らされている。すでに一部の薬局では、調剤用風邪薬の品切れ現象が起きている。
政府は風邪薬に限り、薬品使用量増加時に価格を引き下げる制度である「使用量薬価連動制」適用を緩和するなど対策の準備に乗り出したが、製薬業界への増産奨励効果には限界がある。政府内でも今や風邪薬の値上げ以外には切るカードがなくなったという反応が出ている。
保健福祉省は最近、調剤用アセトアミノフェン成分の風邪薬を生産する鍾根堂(チョングンダン)、韓国ジョンソン・アンド・ジョンソン、コーロン製薬、韓美(ハンミ)薬品、富光(ブグァン)薬品、ジェニュワンサイエンスなどの製薬会社と懇談会を開き、風邪薬危機防止のための対策について話し合った。
この席で、同省は製薬会社に風邪薬の円滑な供給のための生産拡大協力を要請した。これを促すために薬価引き上げなど必要な制度的支援を積極的に推進するという意思も伝えたという。風邪薬危機防止のための薬価引き上げが本格的に検討されるわけだ。
政府は既に、風邪薬を「使用量薬価連動制」から除外するというカードを切った。医薬品の売り上げが前年より一定割合以上増加した場合、保険薬価を引き下げる制度だ。この制度が適用されれば、新型コロナ流行のために売り上げが増えた風邪薬は薬価が引き下げられ、これまで政府の要請によって風邪薬の生産量を増やしてきた製薬会社がむしろ損失を被る構造だった。
しかし、このような制度的恩恵も十分ではないという指摘が出た。業界の減産は防げても、再流行に備えて積極的な増産を誘導するのは難しいという。代表的な事例が、すでに一部品薄現象が起きている調剤用アセトアミノフェンだ。
タイレノールに代表される解熱鎮痛剤と風邪薬の主成分だが、調剤用の場合、一般医薬品より価格が75%ほど安く、製薬会社の積極的な生産拡大を誘導するのは難しい。ここにタイレノールを生産する韓国ヤンセン工場が撤収し、風邪薬の原料を作るファイル薬品工場が火災で生産を中断する事態まで重なり、業界増産はさらに容易ではなくなった。
今冬、新型コロナの再流行時に風邪薬危機が起きれば、薬局10カ所を回っても風邪薬を手に入れることが難しかった3~4月の流行時のような状況になる可能性があるという観測も出ている。今年のインフルエンザ流行注意報は、例年より1カ月以上早い9月に発令され、既にインフルエンザ患者が1カ月で2倍ほど急増した状態だ。
カギは値上げが実際に決まるか、決まったらどの水準に引き上げられるか、ということだ。健康保険が適用される風邪薬の価格が上がる場合、健康保険財政にも影響を与えることになる。再流行の規模が予想より小さく、風邪薬の品薄現象自体が深刻でない可能性もあるという点も念頭に置かなければならない。政府としては難しい判断を迫られているわけだ。
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