韓国産業に対する脅威
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻などにより、平和な国際分業体制が崩れ「グローバルサプライチェーンの危機」が深刻化しています。韓国の事情を取材してみました。(シリーズ2/9)
◇「チップ4」同盟
このような中、米国主導のグローバルサプライチェーン再編の動きが速くなり、韓国産業に対する脅威も大きくなっている。米国は、中国をけん制するためにグローバル技術供給網を再編すると同時に、半導体と人工知能(AI)、次世代通信網など先端戦略産業に関連する主要技術と品目の輸出を統制している。
半導体産業の場合、米国は中国を排除し供給網を再編しようとする目的で「チップ4」同盟を韓国と台湾、日本に提案した。米国の技術と装備を基に、韓国と台湾の生産施設、日本の素材を結合して安定的な供給網を構築しようとする狙いとみられる。これと関連した米中間の競争の深化と中国の反発に伴う副作用が憂慮されている。
8月9日に発効した「半導体と科学法」内のガードレール(安全装置)条項も問題に挙げられる。この条項は、米国政府から補助金を受けた企業が、10年間は中国などで生産施設の新・増設などを含めた投資ができないようにするものだ。中国に生産施設を置く韓国企業が否定的な影響を受けかねない。
◇「インフレ削減法」
米国の「インフレ削減法(IRA)」による電気自動車業界の苦悩も深まっている。この法案は、米国内で生産していない電気自動車については、税額控除を適用しないという内容などが盛り込まれ、韓国産業に少なからぬ影響を与えるものと見られるからだ。
「インフレ削減法」は「半導体と科学法」と共に、米国中心の供給網を構築し、半導体や電気自動車、二次電池など先端産業分野で中国の浮上を牽制するという意図が込められているとされる。インフレ削減法により、韓国の電気自動車メーカーは税額控除の恩恵を受けられなくなり、米国市場でライバル会社に比べて相対的に価格競争力が弱くならざるを得ない。
一部では、インフレ削減法は米国で11月に実施される中間選挙対策だという見方もあるが、今後米国は、中国を牽制すると同時に気候変動への対応強化、米国中心のサプライチェーン再編など、今の基調を継続するだろうという見方が強い。特に、2024年には米大統領選挙があり、来年も似たような水準の強力な対中措置が出る可能性があるという分析も出ている。
国際戦略資源研究院のキム・ドンファン院長は先月27日、「半導体・インフレ削減法など米供給網の再編と韓国の対応懇談会」で、IRAについて「中国が掌握したグローバル鉱物供給網に対する米国の宣戦布告だ」として「重要な点は、米国が戦う準備ができていない状態で先に宣戦布告をし、韓国企業が影響を受ける構図だと」と指摘した。
そのほか、国際分業体制が広がる現在の状況で、サプライチェーン危機はいつ、どの地域でも起こりうる。そして、どのような影響が広がるか予測は容易でない。
ひとまずロシアのウクライナ侵攻の長期化、グローバル食糧需給不安の可能性などがリスク要因として潜在している。韓国は対外貿易依存度が高く、このようなリスクが現実化すれば、物価上昇の勢いがさらに激しくなり、生産に対する影響も広がらざるを得ない。
韓銀は先の報告書で「最近のグローバルサプライチェーンは、戦争とパンデミックの影響を大きく受けており、今後の展開は不確実性が高い」として「グローバルサプライチェーンの状況と国内産業の脆弱性を綿密に点検して事前に備え、今後のサプライチェーン再編に積極的に対応していく必要がある」と伝えた。
(つづく)
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