NFT音源を「投資対象」にさせない
音楽の分野にNFTを活用して、音楽産業の「慢性的課題」だった音源のコピー問題の解決や、インディーズアーティストたち収益確保を目指す人物が韓国でNFT事業を起こしました。その人物をnews1が取材しました。(最終回)
◇ファンダムとともに歩んでいける方向
ハードルを打ち砕くこと以外にも、音楽NFT事業に向けて解決しなければならない問題がいくつかある。
まず、NFTの音源が「真の音楽」として消費されるためには、NFTが単なる投資先ではなく、ひとつのコンテンツとして、さらに大衆化される必要があるのだ。
現在、いくつかのNFTプロジェクトは底値(最低価格)チャートが存在するほど、投資手段としてみなされることが多い。NFTをコンテンツとして消費するより、価格が上がることを期待して購入する投資先として考えられているのだ。
「こうした文化が変わらなければならない」というのが、イム・ジスン氏の指摘だ。
「一般的に限定版アルバムが出るからといって、そのアルバムの『底値』が存在するわけではない。アーティストのNFT事業が最大限、ファンダムとともに歩んでいける方向でなければならない」
限定版アルバムを「アルバムそのもの」と考えて購入するように、NFT音源も「投資対象」ではなく、「ファンが購入したいコンテンツ」としての評価を受けなければならない、ということだ。
NFTがファンダムに与える価値が大きい――イム・ジスン氏はこうみる。「インディーズアーティストはファンカフェのような公式チャンネルが定着していない。彼らにとって、NFTがファンダムへの新たな窓口になるかもしれない。NFTコミュニティでは、アーティストがファンと直接コミュニケーションをとる場合が多いので、ファンダムに与える価値が大きい」ためだ。
◇リセールや闇チケットを防止
3PMは、音源を越えて、グッズ、公演チケット事業にもNFTを適用し、ファンダムを引き入れるための試みを増やしている。一般のファンもNFTを購入できるようにすることが、NFTの大衆化への第一歩だからだ。仁川ペンタポート・ロック・フェスティバルのチケットをNFT化したのも、こうした挑戦の一環だった。
NFTチケットは流通記録を追跡でき、リセールや闇チケットを防止できるのが最大の利点だ。ファンもNFTでチケットを購入すれば、好きなアーティストのイベントに参加した記録がデジタル資産ウォレットに残せるようになる。ファンにとっては記念品であり、公演企画者にとっては顧客分析のデータになる。
ここからさらに、音源NFTとイラストNFTを融合させて事業範囲を広げることも、イム・ジスン氏の目標の一つだ。
「インディーズアーテイストの中には、音源があってもアルバムのジャケット写真が整っていない場合もある。アルバムジャケットにイラストNFTを連結させることで、音源NFTとイラストNFTを結合する事業も検討している」
Web3.0時代の音楽産業は、NFTに変化するだろう――イム・ジスン氏はこう確信している。
プラットフォームではなく、使用者に価値を還元するようなWeb3.0の基本理念を考えてみた時、それに最も適した形式がNFTだというわけだ。
「米国の著名ラッパー、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)はストリーミングプラットフォームからアルバムを撤退し、そのアルバムをNFTで発行した。こうした事例が模範になるだろう。Web2.0時代の音源流通をストリーミングプラットフォームが主導したとすれば、Web3.0時代の音源流通はNFTがリードすることになる」
(おわり)
「HYBE離れ『音楽NFT』に挑戦はnews1のパク・ヒョニョン記者が取材しました。
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