Startup Story ~~ 成功のカギ
エイアイバ(AIVAR) キム・ボミン代表
「ゼペット(ZEPETO)」や「ロブロックス(ROBLOX)」などメタバース・プラットフォームでは、アバターはいずれも3頭身だ。このアバターに着たい服をそのまま着せて、現実感を持つことができるのか……。アバターのファッションから発想を展開したのが、エイアイバ(AIVAR)のキム・ボミン代表だった。
メタバース市場の収益化が本格化するにつれ、関連する産業やコンテンツに対する関心が高まっている。特にアバターを中心としたファッション市場がホットだ。グローバルコンサルティング企業「PwC」の最新報告書によると、仮想ファッション市場は今年、約9兆ウォン規模に成長する見通しだそうだ。
エイアイバは2019年、人工知能(AI)に基づく衣類仮想試着ソリューション「マイフィット3D」を披露したファッションテック・スタートアップだ。最近は混合現実(XR)ファッションショープラットフォーム「ビア(VEER)VR」のベータ版も発売した。
ビアVRは「オキュラス(Oculus)」のようなVR装備さえあれば、誰でもランウェイショーの最前列に立つ、という経験を提供してくれる。アバターモデルを選択し、モデルの着装手順やランウェイの背景など、さまざまなオプションをユーザーが直接設定して、ファッションショーを現実のように満喫することができる。
今年3月の「ソウルファッションウィーク」期間中に、ある映像をYouTubeで公開し、ファッション業界の大きな注目を集めた。「2022年エイベル秋冬コレクション」の立体映像に、アバターモデルの自然なウォーキングを盛り込んだのだ。キム・ボミン代表はこう説明する。
「停止した3次元イメージを実現するのは難しくありません。しかし、ファッションモデルのウォーキングのように、動いている立体映像を作り上げるには、必要とする技術が多すぎます。したがって、いまはほとんどを海外ソリューションに頼っています。われわれの目標は、これを国産化・標準化することです」
画面から飛び出しそうなアバター。これを作り上げるのは、言葉として聞くほど、容易なことではないはずだ。
「最初は雑誌に出てきたモデルを携帯で撮れば、どのブランドのTシャツなのか、いつ発売されたのか、などを知らせるAIのタグ付け技術で創業しようとしました。しかし、この分野は既にGoogleがしっかり握っていました。転向は、とてもよい判断だったように思います」
キム代表はこう回想した。
メタバースは新鮮な広報手段だ。しかし、高コスト、低いアクセスのため、零細ファッション業者が参入しにくい。韓国コンテンツ振興院によると、韓国のファッション業者の54%は年間売上高が5000万ウォン以下で零細業者に位置付けられる。数千万ウォンがかかる仮想ショールームは“絵に描いた餅”なのだ。
実際、メタバースプラットフォーム「ゼペット(ZEPETO)」に出店しているブランドを見ると、ナイキやグッチなどの一流がほとんど。また、焦点が当てられるのは仮想空間であり、アバターは現実の人間とは様相が異なる。
エイアイバはこの2点を突破した。
エイアイバの「マイフィット3D」は、スマートフォンで自身の正面、側面を撮影すると、首回りからバスト、ウエスト、肩周り、上腕・下腕、ヒップ、太もも、脚の長さ、ふくらはぎなど、体の50カ所のサイズを弾き出し、実際の姿と同じようなアバターを作り出してくれる。この時に検出された2Dによる顔の画像によって、顔を3D立体化し、肌の色までそのまま検出して適用する。それゆえ、現実感に重点を置いた技術と評価されるのだ。
こうして作られたアバターに、利用者は買いたい服を着せてみることができる。この時、部位別に「とてもきつい」「きつい」「普通」「余裕がある」「大きすぎる」の5段階で色分け表示し、サイズが合っているか判断できる。
エイアイバは「マイフィット3D」のSDK(ソフトウェア開発キット)をショッピングモールなどで安く売り出し、B2B(企業間取引)事業を本格化する予定だ。このため、「カフェ24」などオープン・ショッピングモール・プラットフォームを中心にリファレンスを確保している。
今年8月には、ウェディングドレスにも適用する予定という。
「新婦が実際にウェディングショップに行き、服を着るように仮想試着します。結婚式場も仮想ショールームの形でイメージ化して、B2C(企業・消費者間取引)ビジネスとして展開する予定です」
キム代表はこう意気込んでいる。
ビアVRは、米スポーツシューズメーカー「ニューバランス(New Balance)」、米ゴルフ用品メーカー「テーラーメイドゴルフ( TaylorMade Golf)」などのブランドショールームを構築した。
最近、韓国の有数ブランドを保有しているファッション総合企業「ハンソンエフアイ(HANSUNG FI)」や「イーランドファッション(E・LAND FASHION)グループ」との契約も完了した。ルイ・ヴィトンなどのブランドにもブランドショールームを提案している。「韓国初のメタバース百貨店プラットフォームの構築を現代百貨店と議論中」(キム代表)だそうだ。
キム代表は、ソウル大化学工学科を卒業後、動画コーデックや「セット・トップ・ボックス(STB)」(放送信号を受信して一般のテレビで視聴可能な信号に変換する装置)など、情報通信技術(ICT)分野で10年間エンジニアとして働いた。2012年には「エイベル」というファッションブランドを発表し、ファッションテック企業に成長する基本技術を固めてきたという。
キム代表はこう意気込みを語った。
「われわれはヒューマンアバターを作り上げ、仮想ショッピング空間も同時に提供できる差別化されたポジションを取りました。メタバースのファッションプラットフォーム市場で、流行をリードしていきたいです」
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