現場ルポ
ソウル市鍾路区(チョンノグ)光化門(クァンファムン)駅の8番出口付近。12日午後11時ごろ、50代のシンさんは友人と焼酎を飲んだ後、飲食店を出た。その10分前、代行運転のドライバーを呼び出していた。
自宅は京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市盆唐区(ブンダンク)亭子洞(チョンジャドン)。電車で1時間はかかる距離だ。最初は「3万5000ウォン」という値段でドライバーを手配したが、ドライバーがなかなか割り当てられない。次に4万ウォン、その次に5万ウォンと金額を引き上げていった。
「最近、午後11時半から翌午前0時20~30分まではドライバーがあまりいない。だから、わざわざ飲食店を早く出たのに……。30分以上も待ったことがある。それでもうまくつかまらず、金額をどんどん引き上げていった」
シンさんはこんな苦労話をした。
韓国ではソーシャルディスタンス緩和により、遅い時間まで酒を飲んで帰宅する人が増えた。その結果、タクシーのように代行運転市場の需要も増えた。だが、新型コロナウイルス感染の影響で減少してしまった市場への供給が、まだ回復していない。
近くのクッパ屋の前に立っていた中年男性もこう嘆いた。
「代行ドライバーを呼んだが、一山(イルサン)まで行くのに5000ウォン上乗せして3万5000ウォンだった」
光化門から高陽(コヤン)市一山まで、電車で1時間ほどかかる距離だ。
料金上乗せを提示しても、ドライバーが見つかりにくい例もあった。
同じ日、記者が午前0時から8分が過ぎたころ、光化門で代行ドライバー紹介アプリを利用して呼び出した。6分たってもドライバーの割り当てがなく、そのうち自動的に呼び出しが取り消された。料金を5000ウォン引き上げたものの、アプリからは「さらに広い地域を検索している」というメッセージを発するのみだった。
代行運転労組によると、ソーシャルディスタンスの緩和措置で店舗の営業時間が延長され、代行ドライバーを呼ぶ客は増えているという。営業時間が午後9時や10時に制限されたころに比べ、需要は分散している。だが、制限がかかっている午前0時には一時的に呼び出しが殺到し、ドライバーの到着が遅くなる。
民主労総のキム・ジュファン代行運転労組委員長は「条件によって異なるが、ドライバーのいない場所にお客さんがいたりすれば、1時間も待つことになる。そのような方は多くはないが、以前に比べると長い時間待っている」と語る。
供給は新型コロナウイルス感染前より減った。厳しい防疫措置で仕事が減り、配達業界や建設現場に移った代行ドライバーらは、まだ復帰していないという。代行運転手労組によると、30%以上の人員が代行運転業務を辞めたとしている。
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