どうする「仮想人間へのセクハラや悪口」対策
広告モデルやアナウンサー、銀行員、アイドル――。「人間固有の領域」と思われていた分野で、人工知能(AI)技術により誕生した仮想人間が縦横無尽に活動しています。「彼ら」が切り開こうとしている世界にどのような未来が広がっているのか考えてみます。(シリーズ4/計8回)
仮想人間の活用によって、新たな形の「デジタル人間」が登場する可能性がある――。実在の人物をまねて仮想人間をつくったり、まったく異なる「ペルソナ」(人格)をつくり上げたりすることが可能だからだ。
江原大産業工学科のキム・サンギュン教授は「技術がより普遍化すれば、芸能人や政治家のような有名人を仮想人間にすることを通り越してします。40代の中年男性が20代女性の仮想人間を『自分のペルソナ』とするような、新しい形態も可能になる」と見通す。つまり仮想人間が「SNSアカウント」のごとく、大衆的な意思疎通の手段になり得るというわけだ。
その先にはどういう世界が広がっているのか。「コンテンツ未来融合フォーラム」のウィ・ジョンヒョン議長は次のように見通す。
「これまで、SNSのユーザーがSNS上で活動する際、アイデンティティは一つに限られていた。ところが仮想人間は複数のペルソナを表現することができる。ある場合には仮想人間Aとして、またある場合には仮想人間Bとして活動することができるのだ。SNS上に、格好よく、きれいな自分の写真をアップするという代わりに、仮想人間をつくって、実際には踊りなどできないのに、一流のダンサーとして振る舞うような演出もできるはずだ」
オンライン画面を通して露出する大部分の領域で、仮想人間が既存の人材にとって代わる。仮想人間の製作に関連した求人は増えるが、既存の雇用の縮小は避けられない――江原大のキム教授はこう懸念する。また、韓国・中央大社会学科のイ・ビョンフン教授は「労働力の問題では、仕事の質的な部分も考えなければならない。表に出る仕事は仮想人間が受け持ち、人は『顔の見えない役割』を担って、仮想人間を支えるという構造がつくられる」と予想する。
仮想人間をいかに扱うかという、というのも今後の課題だ。キム教授は「社会的な合意が必要な時が来るだろう」とみる。「仮想人間に対するセクハラや悪口などにも基準がなければ、現実の人間に対する態度や価値観にも悪影響を及ぼしかねない」というのがその理由だ。
(つづく)