2026 年 3月 13日 (金)
ホーム社会公務員死亡事件が映し出した捜査機関の素顔

公務員死亡事件が映し出した捜査機関の素顔 [韓国記者コラム]

(c)news1

「君、〇〇検事知ってる?」「いえ、知らないです」「君とインタビューもしたって言ってたけど……」

社会部に配属されて2年。連日、事件・事故記事を欠かさず読んでいた筆者の母親でさえ、「検察官」を名乗る人物の詐欺電話に引っかかりそうになった。母は「娘が社会部記者なのに、母親が不祥事に関わるわけにいかない」と“検事”の言葉を信じ、恐怖と圧迫の中で指示に従いそうになったという。

検察や警察、金融監督院などを装って金銭をだまし取る「ボイスフィッシング」は今や典型的な犯罪だが、被害は絶えない。公的機関の名を出されれば、誰しも信じてしまう――そんな心理的圧力が根底にある。

社会部記者として日々検察庁や警察庁を出入りする筆者でさえ、母の件で警察署を訪れたとき、妙な緊張を覚えた。一般市民にとって捜査機関とは、身を守ってくれる存在である。同時に恐怖の象徴でもある。パトカーを見るだけで体が硬直する――そんな感覚を持つ人は少なくないだろう。

最近、ユン・ソンニョル(尹錫悦)前韓国大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏関連疑惑を捜査している特別検察チームの取り調べを受けた京畿道楊平郡庁の50代男性公務員が死亡した。公務員は生前、自筆文書で「特検の強圧的な捜査と会話による圧迫で苦しんだ」と残していた。特検側は「強圧や懐柔はなかった」と主張しているが、公務員側の弁護人は違法捜査の有無を検討し、法的措置を示唆している。公務員の死により事件は「公訴権なし」で終結したが、真相をめぐる攻防は続いている。

このように、取り調べを受けた末に精神的苦痛から命を絶つ――そんな悲劇は過去にも繰り返されてきた。多くの場合、検察による人権侵害的な強圧捜査が原因とされ、「検察改革」の声が高まってきた。そしてついにイ・ジェミョン(李在明)政権下で、検察の捜査権を全面的に廃止し、検察庁自体を解体するという“劇薬”が選択された。改正政府組織法の可決により、検察庁は1年間の猶予を経て2026年10月に完全廃止される。

だが、検察という「強圧捜査の元凶」をなくしたからといって、もう誰も捜査中に命を落とすことはない――そう言い切れるだろうか。皮肉なことに、公務員を取り調べた特検のチームには、現職・元職を含めて検察出身者は一人もいない。判事出身の特検補を中心に、警察官12人と若手弁護士2人で構成されているという。

今後、検察の捜査権は行政安全省傘下の警察と重大犯罪捜査庁(重捜庁)が分担することになる。だが、「検察の権限が警察や中捜庁に移っただけで、本質は変わらない」という批判もある。もしこの二つの機関で再び“捜査中の死”が起きたら、今度はそれらも廃止すべきなのか――そんな皮肉も聞かれる。

問題の根源は「一極集中した捜査権」にある。検察が独占した権力が悲劇を生んだように、警察や重捜庁に権限が集中すれば、同じことが繰り返される危険がある。市民から見れば、検察も警察も重捜庁も「恐ろしくも信頼せざるを得ない」同じ捜査機関にすぎない。

特に現在進行中の「内乱」「キム・ゴニ」「殉職海兵」――三大特検のように政治色の強い捜査では、担当者の慎重さとは裏腹に、被調査者にとっては“圧力”や“脅迫”に感じられることが多い。キム・ゴニ特検は他の特検に比べ規模が大きく、捜査チームは9班、関係者は数十人に上る。だが特検内部に、共通の運営原則や人権保護規定が存在しないという事実には驚きを禁じ得ない。

今こそ、特検の内部に「人権保護準則」や「捜査ガイドライン」を設けるべきだ。さらに、首相室傘下の「検察制度改革タスクフォース(TF)」でも、捜査機関の運営体制について議論が必要である。

検察改革の最終目的は、権力の抑制ではなく「国民の人権を守ること」だ。犠牲となった人々の死が無駄にならないよう、再び同じ悲劇が繰り返されないことを願う。【news1 チョン・ユンミ記者】

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular