韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領を警護する大統領警護処内部で不協和音が鳴り響いている。パク・ジョンジュン氏が警護処長を辞任したことにより、「強硬派」とされるキム・ソンフン次長が大統領の逮捕状阻止を主導しているためだ。
最大野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員は12日、自身のFacebookで「今日の課・部長団会議で、警護次長と(イ・グァンウ)警護本部長の辞任要求が噴出したと聞いている」と伝えた。
ユン議員によると、キム・ソンフン次長はパク・ジョンジュン氏が警護処長だった時に出した指示をすべて撤回し、強硬な対応を指示したという。
パク・ジョンジュン氏は10日、特殊公務執行妨害容疑で取り調べを受けるため警察に出頭する前、▽非暴力の原則▽捜査官の立ち入り許可▽大統領が逮捕された場合の警護車両の移動――を指示したとされる。
パク・ジョンジュン氏は出頭前、大統領権限代行を務めるチェ・サンモク(崔相穆)経済副首相兼企画財政相に辞表を提出し、チェ氏が受理している。
その後、実権を掌握したキム・ソンフン次長がパク・ジョンジュン氏による指示をすべて取り消し、「武力衝突も辞さない」とする強硬な指示を出したという。
キム・ソンフン次長とともに、ナンバー3の地位にあるイ・グァンウ警護本部長も「強硬派」に分類される人物だ。
一部では、警護処の強硬派が高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察が準備中の2回目の逮捕状執行に備え、機関銃以上の重火器武装を検討しているとの噂も出ている。
ユン大統領が、キム・ソンフン次長に「武力の使用を検討せよ」と指示し、この命令を受けた部長(3級)や課長(4級)などの警護処中間幹部が強く反発したという。特にある部長はキム・ソンフン次長とイ・グァンウ警護本部長に辞任を求めたとされる。これを受け、キム次長はこの部長を即座に待機命令に処したとされている。
また、警護処内部ネットワークにA4用紙3ページ分の「捜査機関の逮捕状執行を妨害する行為は、公務執行妨害に該当し得る」という内容の文書が投稿された。ユン・ゴニョン議員は「11日午後0時30分ごろに警護処内部掲示板に掲載され、2時20分ごろに削除されたと聞いている」と明らかにした。
キム次長が削除を指示して掲示文が下ろされたものの、一部の警護処幹部が強く抗議し反発したため、その日の午後には投稿が復元されたと伝えられている。
◇法的処罰を受ける懸念
事実上、強硬姿勢を維持している首脳部とは対照的に、中間幹部層では、令状執行阻止に動員される職員が法的処罰を受ける懸念が広がり、反発の兆候が明らかになりつつあると見られる。
捜査機関側でも、警護処が上層部から下層部に至るまで亀裂の兆しを見せていることを受け、二面戦術を展開している模様だ。
警察はキム・ソンフン次長が3回にわたる出頭要求をすべて無視したとして、逮捕状の申請方針を固めた。イ・グァンウ警護本部長に対しては13日午前10時までの3回目の出頭を要求している。
現在まで警察の捜査に応じているパク・ジョンジュン氏とイ・ジンハ警備安全本部長は穏健派と見なされている一方で、キム・ソンフン次長、イ・グァンウ警護本部長らは強硬派とされる。
野党側は強硬派全員がユン大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏のラインであり、令状執行阻止を主導している核心人物だと見ている。
ユン議員は「パク・ジョンジュン氏が警察に出頭した日、ユン大統領はキム・ソンフン次長とイ・グァンウ警護本部長を呼び、昼食を共にしたと聞いている」と明かしたうえ「警護処はあなたの私兵ではない」と批判した。
一方、公捜処は警護処職員が令状執行を阻止するよう指示した上層部の命令に反抗した場合でも、職務放棄として処罰しないよう善処する案を検討している。
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