2024 年 5月 3日 (金)
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韓国・競争社会の影…リッチな地域で相次ぐ10代の自殺

(c)news1

ソウル市江南(カンナム)区という韓国を代表する裕福な地域で最近、10代の若者が相次いで自殺し、社会に不安が広がっている。特に受験生を持つ保護者らは「子どもに『名門大学に行け』と言ってよいものか」と複雑な心境になっているようだ。

◇「ストレス?解消する時間ない」

江南区では16日、10代の女子生徒がSNSをつないだままビルから飛び降り亡くなった。現場の状況が生中継され、社会的に大きな波紋を広げた。その翌日には、同区道谷洞(トゴクドン)の中学校で、男子生徒が同級生を凶器で刺した後、自殺した。20日にも、同区狎鴎亭洞(アックジョンドン)のマンションから14歳の中学生が転落して死亡し、警察は自殺の可能性を念頭に捜査している。

10代の相次ぐ自殺によって、江南の子どもを取り巻く厳しい現実が浮き彫りになった。塾街として有名な同区大峙洞(テチドン)で小・中・高校時代を過ごした会社員(30)は次のように吐露する。

「ストレスがたまっても、塾通いでそれを解消する時間がない。人間関係はSNSに頼る。夕食はコンビニで1人で済ます。うつ病にかからないほうがおかしい」

◇「うつ病判断が入試で不利にならないか」

保護者の間でも動揺が起きている。

同区駅三洞(ヨクサムドン)を通りかかったある父親(40)は、こんな話をした。

「子どもは塾から帰ってくると、黙って部屋に入る。最近の事件を見て『大変なのか』と聞いた。すると『生きるのが大変だ』と泣いた」

父親は、子どもの塾通いを半分程度減らすことにしたという。

同様に、高校生の娘がいる会社員(50)は次のように心境を語る。

「家で、娘と簡易うつ病検査をした。すると『病院に行ってみろ』という結果が出た。そのつもりなのだが『うつ病や不眠症と診断されれば、入試で否定的評価を受けるのではないか』と心配だ。同じように病院に連れて行かない親は多い」

◇非対面ゆえの孤独感

2020年からコロナブルー(憂うつ)が広がり、若者の心理状態が危うくなっている――こんな分析は多い。

授業が非対面のため、孤立を感じる若者も増えているようだ。健康保険審査評価院(審評院)の統計分析(2022年6月)によると、2021年の10代のうつ病診療患者は5万7587人。2017年(3万273人)から90.2%も増加している。

江南の保護者らは反省と憂慮を同時に抱えているようだ。ある母親(37)の言葉がそれを象徴している。

「融資を受けてまで娘を大峙洞にやったのだから結果を出さねば、と思って娘を勉強漬けにした。今は、それを後悔している。私が『期待しているよ』と伝えれば伝えるほど、娘の携帯電話を眺める時間が長くなる。良くない何かに依存しようとしているのではないか……。怖い」

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