2025 年 6月 6日 (金)
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韓国・李在明政権の課題…経済回復・国民統合・通商懸案など難題が山積

6月2日午後、ソウル汝矣島公園で開かれた遊説で支持を訴える大統領候補のイ・ジェミョン氏(c)NEWSIS

韓国大統領に就任したイ・ジェミョン(李在明)氏は政権交代を成し遂げたものの、低迷局面にある韓国経済に成長の原動力を吹き込み、非常戒厳以降に分裂した国論を統合しなければならないという厳しい課題を抱えることになった。

◇経済回復

継続的に低下していた経済成長率は、非常戒厳事態以降マイナスに転落した。これに加え、グローバルな貿易環境の悪化により、イ・ジェミョン政権は経済・金融に対する精緻な青写真を策定しなければならない状況に置かれている。

最近の韓国経済成長率は、2025年1~3月期にマイナス成長を記録するなど、4四半期連続で「底ばい圏」を記録している。産業生産・消費・投資の指標は3カ月ぶりに「トリプルマイナス」を記録し、内需不振と輸出の鈍化が同時に現れ、景気の減速懸念を高めている。

韓国銀行によると、韓国の実質国内総生産(GDP)成長率は2024年4~6月期に前期比-0.2%、7~9月期は0.1%、10~12月期は0.1%、そして2025年1~3月期は-0.2%と、4四半期連続で0.1%以下を下回った。

このような成長の鈍化は、世界の主要国と比較しても最も深刻な水準だ。1~3月期のGDP成長率は、これまでに1~3月期の成長率を発表した19カ国のうち最も低かった。

韓国の成長率は2024年1~3月期までは市場の期待を上回る1.3%で、主要37カ国(コロンビア・リトアニアを除く36のOECD加盟国+中国)の中で中国(1.5%)に次いで6位の水準だった。

しかし内需不振などの影響で、韓国銀行は2025年のGDP成長率予測を1.5%から大幅に引き下げて0.8%と修正した。

イ・ジェミョン大統領は候補時代、「地域経済と庶民経済が最低限の回復を果たせるよう、即時に補正予算を編成する」と強調した。補正予算の規模については、民主党が公式に言及した最低20兆ウォンより拡大するという見方もある。

第2次補正予算を編成すれば、成長率にわずかな上昇効果が期待される。グローバル投資銀行のモルガン・スタンレーは、20兆~35兆ウォンの追加補正予算を編成すれば、2025年の成長率が0.22~0.31ポイント上昇すると見込んだ。現代経済研究院も、30兆ウォン規模の第2次補正が編成されれば、成長率が0.4~0.5ポイント程度上昇すると予測した。

ただ、大規模な資金供給に伴う財政悪化への懸念も同時に提起されている。30兆ウォン規模の第2次補正予算を全額赤字国債で調達する場合、2025年末の国家債務は1310兆8000億ウォンに膨らむ見通しだ。GDP比国家債務比率は48.4%から49.5%へとやや上昇する。

これを受けて、潜在成長率を高めるための対策が必要だという指摘が出ている。過去20年間における韓国の潜在成長率の低下幅は2.29ポイント(4.27%→1.98%)で、主要先進国の中で最も速い。

イ・ジェミョン大統領は、潜在成長率3%、国力世界5位、AI(人工知能)3大強国という具体的な目標値を提示した。そのために、戦略産業育成に関わる「技術主導の成長」、中小企業および非首都圏まで成長主体を拡張する「皆の成長」、公平と共生の市場秩序を構築する「公正な成長」の3大戦略を提示した。

これは、人為的な景気刺激ではなく、韓国経済の体質改善を基盤とし成長潜在力を向上させる持続的成長を提示したものだが、実行のためのロードマップに具体性が欠けるとの声も出ている。

AI分野では100兆ウォン規模の投資など新産業育成を主要公約に掲げたが、GPU(グラフィックス処理装置)5万個の確保やAI高速道路の構築といった公約は、グローバルな供給網問題と大規模な予算確保が先決だという評価がある。

◇国民統合

大統領選挙が終盤までネガティブ攻勢に終始し、陣営間の対立が激化したことで、イ・ジェミョン政権では「国民統合」と「協治」の重要性がかつてなく高まっているとの声も多い。国政運営の推進力を確保するには、大統領選挙の過程で表れた分裂状況を収拾し、統合のリーダーシップを示さなければならないということだ。

今回の大統領選は、非常戒厳と大統領弾劾に伴う早期選挙であるため、陣営間の対立は頂点に達した。テレビ討論は政策対決ではなく、候補同士の「泥仕合」で終わり、選挙運動の現場では相手陣営を脅迫したり暴行する暴力事件も相次いだ。

イ・ジェミョン大統領もテロなど身辺への脅威が懸念され、早い段階から防弾チョッキを着て街頭に立ち、遊説現場には防弾ガラスの壁が設置された。選挙運動期間中に防弾ガラスが登場したのは、韓国では史上初めてのことだ。

イ・ジェミョン大統領はこのような政治的な両極化を根絶しなければならないとし、選挙期間中一貫して国民統合のメッセージを発信した。対立と葛藤が生んだ悪循環を断ち切らねばならず、特定の個人を狙って標的とするような政治的報復は決してやらないと明言した。また、イ・ジェミョン政権の唯一の人事基準は能力・清廉性・忠誠であるとし、「国民統合政府」をつくると強調した。政界では、首相をはじめとする内閣構成が、イ・ジェミョン大統領の統合意志を読み取る一つの指標になると見られている。

◇通商懸案

通商の懸案も、政権初期の最重要課題である。イ・ジェミョン大統領は就任直後は内政に総力を傾けるという構想を持っているが、ドナルド・トランプ米国大統領の第2期政権が再び強力な自国優先主義の貿易政策を打ち出し、輸出産業にも緊張感が高まっている。

さらに最近の米国裁判所の判決により、相互関税を巡る政策の不確実性が深まり、トランプ政権は関税重視の方針に変わりがないとの意向を明確にし、世界の通商秩序は大きな混乱に陥っている。

イ・ジェミョン大統領は先月末、6月中に開催される主要7カ国(G7)首脳会議および北大西洋条約機構(NATO)首脳会議などについて、「当選直後である以上、まずは国内の状況を安定させることに集中する必要がある」とし、「今は出席の可否を判断する時ではなく、政府部処の責任者たちと相談してみる」と述べた。米国の相互関税猶予が終了する7月9日までは、関税交渉も急がないという立場だ。

政界関係者は、「トランプ政権の貿易政策は単に関税を引き上げるレベルではなく、国際経済秩序を根本から変えようとする動きだ」とし、「関税交渉にとどまらず、新たな輸出国の開拓など柔軟で積極的な対応が必要だ」と語った。

(c)NEWSIS

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