
2026年2月にも打ち上げが予定されている米航空宇宙局(NASA)の有人月探査ミッション「アルテミス2号」に、韓国の小型キューブ衛星「K-RadCube」が同行する。この衛星は、宇宙飛行士や電子機器に影響を与える宇宙放射線を測定する科学任務を担う。
K-RadCubeは、韓国の国立研究機関である韓国天文研究院が開発を主導した。衛星は重さ約20キロで、12ユニット(1ユニット=10センチ四方)の立方体型。月まで飛行するアルテミス2号の途中、高度約7万キロの地点で分離され、地球周辺の高放射線帯「ヴァン・アレン帯」で放射線を観測する。
この観測は、今後の有人宇宙飛行における被ばくリスクを評価する重要なデータとなり、収集された情報は国際的に公開される。韓国宇宙航空庁によると、同庁は2025年5月、NASAとK-RadCubeをアルテミス2号に共同搭載するための履行合意を結んだ。この協力は、韓米両国の深宇宙探査パートナーシップを強化する機会になると期待されている。
K-RadCubeの任務は、衛星にとって極めて過酷な環境下で進められる。軌道は高度7万キロから地球に近い200キロまでと極端な楕円形で、地球大気との摩擦による加熱リスクがあるため、効率的な航法制御と姿勢制御が衛星の生存率を左右する。
しかし、高度2万キロを超えるとGPS信号が届かなくなるため、位置情報の取得が難しい。これに対して宇宙航空庁は、電波の反射時間やドップラー効果(周波数変化)を分析することで、代替的な航法が可能であると説明している。
また、衛星に装着されたセンサーを活用し、太陽光を効率的に受けられる姿勢を保つ技術も導入される。これにより、太陽電池の発電効率を最大化し、限られた電力を有効に活用する。
通信については、真空状態の宇宙では低周波電波が遠距離まで届きやすく、現代の高性能アンテナ技術の進化もあって、高度7万キロという距離は大きな問題にはならないという。なお、韓国の月探査機「タヌリ」も、深宇宙アンテナでの通信が可能な水準にある。
K-RadCubeの場合、深宇宙用アンテナを使用する必要はなく、地上局の運用とデータ送信は、韓国の衛星通信企業KT SATが担当し、海外の地上局も通信支援に協力する。
科学観測は衛星が正常軌道に入ってから約28時間続けられる見通しで、状態が良好であれば2週間以上の観測も可能になるとしている。
K-RadCubeの衛星プラットフォームは、韓国の宇宙ベンチャー企業ナラ・スペース・テクノロジーが開発した。開発期間が限られていたため、民間の商用衛星技術を最大限活用して準備が進められた。
衛星には、韓国の大手半導体企業であるサムスン電子とSKハイニックスが開発した耐放射線半導体素子も搭載されており、宇宙放射線による誤作動を防ぐ技術の実証も目的の一つである。
また、衛星の姿勢制御に必要な推進装置には、韓国国内で初めて「水(スチーム)推進機」が採用された。水蒸気や電気分解によって得られた気体を噴射して推力を得る方式で、有人飛行に同行する性質上、爆発や毒性のある推進剤の使用が避けられた。
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