2024 年 5月 3日 (金)
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的確に理解する「AI秘書」…日米の大企業・投資家も惚れた

Startup Story ~~ 成功のカギ

Allganize イ・チャンス代表

Allganize イ・チャンス代表©MONEY TODAY

人工知能(AI)チャットボット(自動会話プログラム)の時代だ。お客様センターはもちろん、企業の職員が内部データを検索する時にもチャットボットを使う。しかし、今はまだ明確な回答を提示してくれるAIチャットボットは多くない。質問を理解できない、複数ある回答のうち確率に応じて一つの回答を選ぶなど、求めていた回答を見つけるには時間がかかる。

Allganizeは、AI技術により、こうした問題を解決するスタートアップ企業だ。「AI検索ソリューションは、日常的に使われる言葉で質問を送ると、AIが言葉の意図を把握して回答してくれます。キーワード検索で関連情報を探し、求めていた答えが見つかるまでそれを繰り返すというような必要はありません」。イ・チャンス代表はこう胸を張る。

◇拡張性アップ

一見、簡単に思えるが、AI検索をするには高度な自然言語理解システム(NLU)技術が必要だ。例えば、銀行で、ある顧客が「政府政策資金のチョンセ(賃貸保証金)ローンを受けた後に引っ越ししてもよいか」と問い合わせた。販売して間もない商品であるため、担当職員は住宅ローン約款と規定集を一つ一つ検索しなければならない。だが、規定に「引っ越し」という単語が大量に使われている場合、回答を見つけるにはさらに時間がかかる。加えて、約款内に「引っ越し」という単語が「転入」「目的物変更」といった用語で表記されていた場合、検索結果に反映されない場合もある。

Allganizeの検索ソリューションは、NLU技術によってこうした問題を解決した。

「『政策資金のチョンセローンを受けてから引っ越したが、ローンの延長はできるか?』とだけ入力していただければ、あとはAIが勝手に意図を読み取り回答を探してくれます。『引っ越したが』の代わりに『移転したが』や『転出しようと思って』など、どう質問しても構いません」

検索対象である約款や規定など、社内データを簡単に検索データベース化(データのタグ付け)できることもAllganizeの強みだ。文書の解析だけでなく、PDFやPPT、Excelなどの非定型化されたデータも、別途の手続きなくタグ付けし、リアルタイムで追加できる。「タグ付けが単純明快。初めて見る種類のデータや少量のデータも検索が可能なので、どんな業種からでも簡単に導入できます」。イ代表はこう解説する。

◇AI検索で企業効率性アップ

AI検索ソリューションにより、企業は相当な時間やコストを削減できるという評価が出ている。イ代表は「会社の職員が、従来のキーワード検索を用いて回答を探す時間は、1日当たり平均2時間30分に上るという調査結果もあります。AI検索ソリューションなら、こうした時間やコストを減らすことができます」とアピールする。

市場には既にIBMなどのグローバル企業はあった。ただ、Allganizeは検索精度の高さや追加データのタグ付けの簡素化などを武器に、公開入札でライバル企業と差をつけている。

KB証券やクレジットカード「現代カード」など韓国企業だけでなく、日本のSMBC金融グループや野村グループ、J-POWER(電源開発株式会社)、米コカ・コーラがAllganizeのソリューションシステムを採用している。イ代表によると、顧客会社の65%は日本企業、17%は米国企業という。投資界でもストーンブリッジ・ベンチャーズやSMBCなど、米国や日本の投資家から累計1500万ドルを受け取った。韓国では2019年からKBイノベーションハブがその成長性を認め、金融や系列会社との提携を支援した。

イ代表は「Allganizeが実現するAI検索ソリューションは、大半の主要な処理プロセスにディープラーニングが使われています。韓国語や英語、日本語に限らずどの言語にも適用できます。今年からは英、仏、独などの欧州市場進出に本格的に着手しようと専門チームを結成しました」と明かした。

Allganize サイトよりキャプチャー©KOREA WAVE

◇成功の連鎖を遂げた2度目の起業

イ代表は、この業界で成功した“連勝起業家”としても有名だ。

韓国科学技術院(KAIST)のコンピュータ学科で修士号を取得し、携帯電話会社SKテレコムに勤めていた。2010年、AI関連サービスに挑戦すべくスタートアップ「5Rocks」を立ち上げた。ゲーム利用者の行動パターンから、予想売上や離脱の可能性を分析し、ゲームの設計・運営を支援するサービスを展開した。

「5Rocks」は起業後まもなくグローバル舞台で競争力を認められた。投資誘致を続け、わずか4年目の2014年には、米モバイル広告企業Tapjoyが買収の意向を表明した。持分100%を400億ウォンで買収する契約だった。当時、まだ存在感の薄かった韓国スタートアップが、グローバルな舞台で競争力を認められた「初のジャックポット(大当たり)」契約だったといわれている。

「5Rocks」売却とともに米国に拠点を移した2017年、イ代表は新たな挑戦に乗り出す。「5Rocksはそうは言っても伝統的なマシーンラーニング技術でした。ディープラーニング技術が登場し、勉強するなかで、ディープラーニングがもたらす社会や産業界の変化は計り知れないだろうと感じました。ディープラーニング技術で世界を変える起業をしてみたくなりました」

そして2度目の起業として乗り出したのがAllganizeだった。

「10年以内にすべての企業が、経営インフラにAIソリューションを導入すると見込まれます。IBMやセールスフォースはもちろん、より多くのグローバル企業がこの市場に参入するでしょう」。イ代表はこう見通したうえで、意気込みを語った。

「文書や言語に基づいた企業のAIインフラは、すべてAllganizeのソリューションが網羅します。10年後には現在のグローバル大手企業よりも、さらに大きなAI企業になっているでしょう」

©MONEY TODAY

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