
「死んだほうがまし。これが私に残された最後の手段です」。2025年9月、韓国京畿道平沢市に住む13歳の女子中学生が、サムスン生命が運営する青少年向けSNS相談チャネル「ライム」でこう訴えた。相談員は即座に対応し、警察に通報して、建物の屋上にいた彼女を無事に保護した。
この事例は氷山の一角に過ぎない。韓国では自殺が青少年の死因第1位であり、自己傷害や自殺未遂を起こす小中高生は1日平均20人に達するという。
こうした危機的状況に対応するため、政府や地方自治体だけでなく、企業による社会貢献活動が補完的な役割を果たしている。
代表的なのが、サムスン生命が2024年から展開している青少年自殺予防プロジェクト「ライキー(LIKEY)」と、自殺リスク対応チャネル「ライム(LIME)」だ。
「ライキ―」は学校内で、生徒が主導して進める自殺予防プログラムだ。従来の教師主導型の形式とは異なり、生徒自身が「感情を話してみよう」といったスマートフォンのゲーム形式を通じて、自分の気持ちを表現し、誰に助けを求めるべきかを学ぶ。プログラムは一過性のイベントではなく、教育現場で実際に使えるツールとして設計されているのが特徴だ。
サムスン生命は9カ月にわたり「ライキ―」を実施する学校の生徒を育成し、自殺予防の担い手に育てている。また、年2回、350人の専門相談教員を対象にプログラムの研修を実施し、さらなる普及を図っている。
2023年には3校・1036人を対象に試験導入された「ライキ―」は、2025年には370校・2万1195人に拡大された。2026年には500校・2万3000人の生徒への展開を目指している。
一方、「ライム」は24時間365日稼働するSNS相談チャネルで、約80人の相談員が常駐し、最大8回まで同一相談員との継続的なカウンセリングを可能にしている。2025年には自殺リスクの高い「危機相談」が2065件に達し、前年比164.4%の増加となった。これは自殺衝動を抱える青少年が実際に「ライム」を頼っていることを意味する。
相談内容に自殺の具体的な言及があった場合は、「生命の電話」の専門カウンセラーを通じて、病院や専門支援機関に連携される仕組みだ。この2年間で「ライム」により命を救われた青少年は11人にのぼる。なかにはグルーミング被害や家庭内暴力の被害者もおり、警察や消防、支援センターへと繋がれている。
サムスン生命「生命尊重事務局」のキム・ヨンジェ局長は「教育当局や学校も努力してきたが、すぐには効果が現れなかった。だからこそ、子どもたちと共に呼吸するようなプログラムを通じて、社会に変化が広がってほしい」と語っている。
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