韓国KBSの長寿番組「全国のど自慢」の司会を務めたソン・ヘ(宋海)が8日、95歳で死去した。34年にわたって番組を担当し、今年4月にはテレビ音楽番組の最高齢司会者としてギネス世界記録に登録されていた。
◇北朝鮮地域の出身
ソン・ヘは1927年、現在の北朝鮮黄海南道・載寧(ジェリョン)に生まれた。1949年に海州(ヘジュ)芸術専門学校に入学し、声楽を勉強した。朝鮮戦争(1950~53)の際、延坪島(ヨンピョンド)に避難し、そこから米軍艦に乗って釜山(プサン)にやってきた。「失郷民」として“海の道”を渡ってきたソン・ヘは、この時から芸名に「海」を加えることにしたと伝えられている。
その後、「青空楽劇団」で歌手として活動し、楽団公演で特有の話術を生かして雰囲気を盛り上げ、同時に司会の経験も積んだ。芸能活動を始めた後、放送局を行き来しながらコメディアンとして活躍した。
朝のラジオ番組「街路樹を駆け回りながら」の進行を引き受け人気を集めたが、1986年に息子がバイク事故で死亡したのを契機にすべて放送活動をいったん停止。だが1988年に「全国のど自慢」の司会者を務めて以後、番組の顔となった。2003年に北朝鮮の朝鮮中央テレビと共同制作した特別企画でも司会した。
◇「母は一度も夢に出てこない」
北朝鮮地域の出身で「失郷民」だったソン・ヘが、切なさをあらわにすることもあった。
ソン・ヘの死去を受けて8日午後にKBSで放送された「国民的司会者ソン・ヘ追慕特選KBS傑作ドキュメンタリー」では、南北分断によって離れ離れになった母親を懐かしみ、目頭を熱くする場面が映し出された。
ソン・ヘがかつて中国を訪問した際、北朝鮮との国境にある豆満江(トゥマンガン)に足を運び、「涙に濡れた豆満江」を歌いながら、母親への思いを吐露したことがあった。
「夢であっても、母親が行き来してくれることを、いつも願っていた。夢の中で、故郷がちらちらしたこともあった。でも、母親が一度も夢に出てこない。あまりにも長い歳月(が過ぎた)」
こう話し、涙を見せた。
◇コロナ感染
ソン・ヘは今年に入ってから入退院を繰り返し、3月には新型コロナウイルス感染の陽性判定を受けていた。8日午前、自宅で倒れているのが見つかった。
葬儀は「喜劇人葬」として営まれる。コメディアン協会のオム・ヨンス会長が葬儀委員長を、ソクヒョン、キム・ハクレ、イ・ヨンシク、チェ・ヤンラク、ユ・ジェソク、カン・ホドン、イ・スグン、キム・グラ、キム・ソンギュ(KBS喜劇人室長)、コ・ミョンファン(MBC室長)、チョン・サムシク(SBS室長)が、それぞれ葬儀委員を務める。
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