
北朝鮮が「メンタルスポーツ」と称される記憶競技の振興と専門人材の育成に力を注いでいると、自国メディアで大々的に宣伝している。北朝鮮の対外宣伝誌『錦繡江山』12月号は、「記憶の名人を育てる博士」と題する記事で、8月末に開催された「大学生記憶力競技会」で1位となった学生、ヤン・ジョンヒさんの訓練過程を紹介した。
同誌によれば、ヤン・ジョンヒさんは「主配記憶(数字・単語記憶)」「顔と名前の記憶」「仮想の事件と年代記憶」の3種目で世界記録を更新したとされる。ヤン・ジョンヒさんは「記憶術の訓練を始めた頃は体が固まるようだった」と話し、長時間に及ぶ高強度の集中力を必要とする訓練の過酷さを語った。
ヤン・ジョンヒさんによると、1時間の記憶内容を2時間半で想起し、その後も記憶を維持するためには4時間半の持続的集中力が求められ、「強い意志と忍耐が必要だ」と述べた。
彼女を指導したチャ・ヨンホ氏は、金亨稷師範大学の教授で、北朝鮮の記憶術教育界の第一人者とされている。チャ・ヨンホ氏は、過去に世界記憶力選手権で2度優勝した実績があり、これまでに60人以上の「記憶の名人」を育成してきたと同誌は伝えている。
チャ・ヨンホ氏はもともと外国語教師だった。世界の記憶術教育の実態を知り衝撃を受け、独自の教育理論を構築することを決意したという。記憶術や珠算、思考図、速読法などを組み合わせた『脳発達教育理論研究』を博士論文としてまとめ、現在は30~40代を中心に広く読まれていると報じられている。
韓国ではすでに姿を消した珠算・暗算・速算といった「レトロ教育」が、北朝鮮では依然として注目されている実情もうかがえる。
チャ・ヨンホ氏はこのほか、「児童の脳発達教育」「脳の活用技法」「学習能力と記憶術」「誰でも学べる記憶の妙技」など、記憶術に関する教材・参考書を10冊以上執筆したとされる。
1991年に創設された世界記憶力選手権(World Memory Championships)は、記憶を競う国際大会で、毎年1回開催されており、各国の代表選手が参加する。競技では、決められた時間内にどれだけ多くのイメージや数字、顔と名前、歴史的事件などを記憶できるかを競う全10種目が実施される。
北朝鮮メディアは今回の事例を通じ、「記憶スポーツ」分野でも世界に肩を並べていると強調しており、国家的次元での頭脳強化教育を成果として宣伝している形だ。
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