2024 年 5月 6日 (月)
ホーム特集Startup~成功のカギあの東京五輪アーチェリー韓国代表もインストール…「瞑想で心の治癒」アプリ

あの東京五輪アーチェリー韓国代表もインストール…「瞑想で心の治癒」アプリ

Startup Story ~~ 成功のカギ

mabo ユ・ジョンウン代表

ユ・ジョンウン代表©MONEY TODAY

ソウル・仁王山の麓、月の町(タルドンネ)にオフィスを置くユニークなスタートアップ企業がある。国内初の瞑想トレーニングアプリを開発・運営する「mabo(心を見つめて)」だ。アイテムを見ると、創業者が宗教や哲学関連の職についてきたように思えるが、まったくそうではない。ユ・ジョンウン代表は高麗大心理学科を卒業後、世界4大会計事務所の一つ「大手監査法人プライスウォーターハウスクーパース」(PwC)、総合コンサルティング「アクセンチュア」、IBMのグローバル・ビジネス・サービス事業で働いた、いわゆる大手コンサルタント企業の出身だ。

なぜ瞑想専門家の道に?

「コンサルタントとして働きながら“会社の組織文化を変えるには、まず人が変わらなければ”と悟りました。どうすれば人の心で変化を導き出せるのか……」

悩んだ末、会社を辞め、ソウル大で組織心理学の博士課程に進んだ。そうしているうち、ある一冊に出会った。『サーチ・インサイド・ユアセルフ (Search Inside Yourself)』。Google社で瞑想プログラム「心のサーチ」を導入したエンジニア、チャディー・メン・タン氏が著した本だ。これを読み、瞑想の世界に没頭するようになった。

ユ氏は瞑想の大衆化を目標に掲げた。2015年のテスト版を経て、2016年に「mabo」アプリをリリースした。スローガンは「コーヒー1杯の値段で瞑想を楽しめるアプリ」。2018年には法人を設立し、瞑想事業を本格化させた。

発売当初、maboは韓国の2030世代(20~30代)の女性の間で口コミが広がり、利用者が増加、さらに新型コロナウイルス感染拡大の余波で規模がさらに膨れ上がった。現在までのダウンロード数は36万件、会員数は22万人に達する。

©MONEY TODAY

maboの最大の強みは、瞑想へのアクセシビリティ(近づきやすさ)を高めた点だ。“大自然のようなどこか特別な空間でしか瞑想はできない”という思い込みを取り除き、オフィスや公共交通機関など日常空間でも、スマートフォンさえあれば簡単に瞑想にふけることができるよう手助けをする。

瞑想コンテンツも豊富だ。初心者向け7日間の基礎トレーニングから▽睡眠▽気分別▽シチュエーション別▽注意力の集中トレーニング▽瞑想音楽▽ASMR(聴覚への刺激で得られる快感や心地よさ)――など、約450のコンテンツが準備されている。定額制だが、ハードルを下げるため一部コンテンツは無料で提供している。

特に、利用者がコンテンツに対して感想を残せるようにして、コミュニケーションの空間を設けて、瞑想の治癒効果を高めた。

「他の人とつながって、共感し、励まし合えます。悩みが自分だけのものではないとわかるだけでも、大きな治癒効果があります」。ユ代表はこう説明する。

maboはB2C(消費者向け)だけでなく、B2B(企業向け)としても成果を上げている。「国家トラウマセンター」「一山病院精神科」「釜山自殺予防センター」「世宗市精神健康福祉センター」などでは精神健康面での効果が認められ、東京五輪で金メダルを獲得したアーチェリー韓国代表チームにも提供された。

企業では、ネイバーオーディオクリップ、FLO、Welaaaなどのオーディオプラットフォームがmaboのコンテンツを導入。アモーレパシフィック 、 現代自動車 、 韓国東西発電 、 韓国土地住宅公社 、 韓国Microsoftなども職員への福祉にmaboを活用する。

最近話題のメタバース事業にも進出した。昨年、SKテレコムのメタバースプラットフォーム「イフランド(ifland)」とのコラボで、mabo瞑想ルームをつくり、20代の大学生から30~40代の社会人まで、さまざまな世代を参加対象とした「心安らぐ瞑想集会」を開催した。

なぜ瞑想する必要があるのか? この質問にユ代表は次のように答える。

「人生には変化が訪れます。瞑想を“目を閉じて何もしない受動的なもの”と考える傾向がありますが、それは瞑想ではありません。瞑想により、自分自身を見つめ直し、過ちがあるなら改善しなければならないという自覚を持つことができます」

「運動をすれば体は健康になるはずなのに、度が過ぎればかえって悪くなりますね。瞑想も同じことです。フィットネス器具の使用法を理解したうえで運動してこそ、筋肉が鍛えられます。それと同じように、心の筋肉を正しく鍛えるための、心の運動の原理をmaboに盛り込みました」

ユ代表によると、パニック障害や不安・うつ病で精神科の治療を受けていた人が、maboを通して精神の安定を取り戻し、薬の量を減らすことができたという事例もあるという。

瞑想の大衆化と習慣化――これが目標だ。今のmaboをグレードアップし、より多くの人に瞑想を広めるために、投資誘致も進めている。

「瞑想もソーシャル化し、プラットフォーム化しなければならないと思います。mabo購入者の3分の1は、利用してから1年以上が経った方々です。瞑想をちゃんと習ってみたいと考える利用者のために、コンテンツ事業にさらに力を入れていきます」

「ジムに通うように瞑想も日常的にできる。街のいたるところで瞑想センターを運営している欧州諸国のように、韓国国内にも活発な瞑想システムのモデルを作らなければなりません。maboがそれに貢献できるようにしたいです」

ユ代表はこう力を込めた。

©MONEY TODAY

RELATED ARTICLES

Most Popular