特にGoogleやAppleなどのビックテックが利用者個人情報保護を強化し、モバイル「オーダーメード広告」が難しくなったのも、スマートテレビを活用したFASTサービスを広告業界が注目する理由だ。モバイルプラットフォームと比べると、まだスマートテレビの利用者の裾野は広くないが、データの質の面では引けを取らないというのが業界の説明だ。既存のテレビ広告は時間帯と放送番組によって世帯別分析なしに同一の広告を送り出してきた。だが、スマートテレビはインターネットとつながって顧客の視聴データを確保でき、これを基に利用者の関心事を把握して、モバイル広告に劣らない個別化が可能だ。
韓国国内でもこのような変化に注目している。アドテック企業「モチーフ・インテリジェンス(Motiv Intelligence)」は、スマートテレビのデータなどを活用してオーダーメード広告を流すプログラマチックテレビ広告商品を、2018年からSKブロードバンドIPTV視聴者を対象に提供してきた。ヤン・ジュンモ代表は「多様な無料広告型ストリーミングサービスが急速に成長し、広告業界の様相も変化するだろう」とみる。「グローバルストリーミングプラットフォーム社や国内IPTV社などと早めにオーダーメード型広告サービス供給契約を結び、視聴者のライフスタイルに合った広告を出すための研究開発投資を強化している」とも語った。
◇韓国企業も「FAST」進出…サムスン・LGも基本搭載
韓国ではSKブロードバンドが今年1月、「プレイゼット(PlayZ)」にFAST機能を適用した。プレイゼットは一種の「OTTポータル」の概念。だた、配信料を払えば国内外の提携OTTをすべて視聴できるのはもちろん、広告のストリーミングサービス「チャンネルZ」も搭載した。購読料0ウォンで芸能11、ドラマ7、映画5、ライフ5、スポーツ3、ニュースなど32チャンネルを無料で提供する。
サムソン電子とLG電子も自社のスマートテレビ製品にそれぞれサムソンテレビプラスとLGチャンネルアプリを搭載し、広告が表示される無料コンテンツを提供し、グローバルFAST市場に参入している。サムソンテレビプラスは2015年、初めて国内でサービスを開始し、昨年末には世界23カ国で約1500万人以上の利用者を獲得した。LGチャンネルも世界的に約2000本のコンテンツを提供している。 特に、韓流チャンネルを欧州地域に追加配信し、昨年は総視聴時間を2019年比で4倍近く増やした。
このようにスマートテレビメーカーまで独自の動画サービスに参入したのは、スマートテレビの販売量に効果があるのはもちろん、広告料も高いからだ。さらに、スマートテレビの普及が現在の先進国中心の市場を超えて新興国まで広がれば、広告収益のパイも大きく拡大する見通しだ。
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