2025 年 11月 3日 (月)
ホーム社会「遺骨は自然へ」道は開かれたが「祈る場所がない」…韓国「散骨」の普及は遠く

「遺骨は自然へ」道は開かれたが「祈る場所がない」…韓国「散骨」の普及は遠く

(c)MONEYTODAY

ソウルに住む70代の女性。全羅南道にある40年前に亡くなった父親の墓を改葬し、近くの私設納骨堂に移した。女性は「高齢で墓の手入れが難しくなり改葬した。でも、散骨のように、故人を祈る場所がない形態はまだ考えていない。もう少し世代が変われば散骨も可能になるだろう」と話した。

韓国で2025年から、墓地施設での散骨が許可された。だが、実際には需要が高くなく、各自治体は散骨場の整備に慎重な姿勢を見せている。散骨は樹木葬や芝生葬といった従来の自然葬とは異なり、特定の場所を占有する形式ではない。それゆえ、祭祀など追悼儀式を重視する韓国人の情緒にはまだ馴染まないという。ただ、散骨場が整備されていなければ、需要があっても利用できないため、先制的な対応が必要だとの声も上がっている。

保健福祉省によると、2025年に実施された「散骨場造成事業」に参加した自治体は、忠清北道清州市、全羅北道茂朱郡、ソウル市の3カ所にとどまった。当初の申請自治体は清州市のみだったが、参加を促した結果、2カ所が追加された。同省は事業費の70%、最大1億ウォンを国費で支援している。

同省はアンケート調査に基づき、国民の23%が散骨を希望していると見ている。ただ実際には「ソウルなどを除くほとんどの」自治体は消極的だ。ソウル市の関係者は「ソウル市立墓地には成人とは別に子どもの遺骨を個別に散骨する庭園がある。子どもの葬儀の場合は死産や生まれてすぐ病気になった子が多く、散骨の需要があると把握している」と話した。

散骨と聞くと、映画のように深い山奥で撒くイメージがあるが、散骨もれっきとした墓地施設内で営まれなければならないため、芝生に埋設する形になる可能性が高い。樹木葬や芝生葬は標識石で埋葬場所が示されるが、散骨は複数の故人の遺骨が混ざる。これにより、散骨は埋葬数の制限がないという利点がある一方で、遺族にとってはマイナス要因となる。清州市の関係者は「散骨が定着するためには、実際の利用者のポジティブな経験と認識の改善が必要だ」と述べた。

釜山には公営の自然葬施設がまったくない。釜山では最近、葬儀施設の不足により納骨堂を増設し、海洋葬を導入すべきだとの声も高まっている。ただ、海洋葬は海岸線から5km以上離れた海上で営まなければならず、費用などが課題となっている。だが毎年死亡者が急増する中で、特定の場所を占有する葬儀形態は持続困難だ。

保健福祉省は、公的な総合葬儀施設の改築・補修に国費を申請する際、散骨場造成計画を併せて提出させることで、まずは散骨場の確保を進める。これにより、総合葬儀施設約40カ所に順次、散骨場が整備されると予想されている。

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