米中覇権争い、北朝鮮核問題、日韓関係など、外交の難題に直面するであろう次期韓国大統領を選ぶ選挙は既に3週間を切った。選挙戦で1、2位を走る与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏と保守系野党「国民の力」のユン・ソンヨル(尹錫悦)氏の外交・安全保障関連の公約を比較してみた。
イ候補が掲げる国防・外交・統一の公約のキャッチフレーズは「スマート強軍、実用外交で平和安保の実現」、ユン候補は「堂々とした外交、堅固な安保」だ。このうち国防を除いた外交・統一分野の場合、公約の具体的な内容以前に、方向性において、両候補の間に少なからぬ違いを見いだすことができる。
◇米韓、中韓関係
イ候補とユン候補いずれも、韓国の外交政策で米韓同盟が重要だという点に異論はない。ただイ候補は「同盟の包括的発展の実現」を、ユン候補は「同盟の信頼回復と未来志向的な結束強化」を強調し、現在の同盟関係に対する評価、認識の違いを見せている。
米韓同盟に対するイ候補の認識は、「既存の安保同盟から経済など包括的分野に拡大すべきだ」というムン・ジェイン(文在寅)政権の認識を事実上継承している。
イ候補が当選した場合、「政策の連続性」という次元で、昨年5月のムン大統領とバイデン米大統領の首脳会談で採択した共同声明に基づき、今後の両国関係を描いていく可能性が高い。
ユン候補も諸分野で両国間の包括的協力に考えを提示しながらも、その先決課題として「同盟の信頼回復」を挙げている。この点がイ候補との最も大きな違いだ。つまり、ユン候補は「ムン大統領就任後、両国間の信頼が崩れたため、次期大統領はこれを先に再建する必要がある」と判断しているというわけだ。
こうした両候補間の対米関係における認識の差は、中国との関係をどう構築していくかについて影響を与えている。
イ候補は「米中競争を国益増進の機会に活用する能動的外交を展開する」として▽中韓間の実質協力の増進▽朝鮮半島に対する中国の肯定的役割誘導――を公約に掲げた。
一方、ユン候補は「米韓人工知能(AI)科学技術同盟強化」などを通じ、米中間の競争が激しい半導体・バッテリー・AIなどの分野で米国と歩幅を合わせることを示唆した。
両候補間の認識の差は、バイデン米政権が「中国けん制」目的で追求するインド太平洋戦略を語る際、より明確に現われる。
米政権が「自由で開放されたインド・太平洋戦略」(FOIP)実行のためのQUAD(日米印豪)と関連して、ユン候補は今月8日、外交専門誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、米中間競争の中で韓国は米国側に立つべきだとしたうえ、「QUAD実務グループ」の活動に積極的に参加しなければならないという立場を明らかにした。
QUADは現在▽新型コロナウイルス感染ワクチン▽気候変動▽核心技術▽海洋安全保障――の4分野で実務グループを置いている。いずれも中国との摩擦が避けられないというのが外交関係者の評価だ。
これに対し、イ候補は、ムン政権が追求してきた米中間の「戦略的曖昧性」の基調と事実上の同義語である「実用外交」を強調する。韓国がまず「米国か、それとも中国か」を選択して身動きの幅を狭める必要はない、ということだ。
イ候補は先月の新年記者会見でも「韓国はQUADに加入すべきか」という質問に「事前に答える必要はない」とし、状況に合わせて対応すべきだという趣旨の答弁をしたことがある。
◇日韓関係
1965年の国交正常化以降、最悪の時期を送っているという日韓関係については、イ、ユン両候補とも改善が必要だという立場だが、解決策は不明だ。
イ候補は「政経分離のツートラックで実用的な韓日関係を構築する」と述べたものの、これは「韓日間の歴史問題解決と未来志向的協力の分離」という現政権の基調と同じだ。
ユン候補も昨年11月、ソウル外信記者クラブ懇談会で「(日韓間の)信頼が形成されれば、過去の歴史問題も明確に克服可能だ」と述べる一方、具体的な方法にはやはり疑問符がつけられている。
◇南北関係
「難題中の難題」である北朝鮮に対する見方も違う。
イ候補は「北朝鮮問題でも、政権与党の候補らしく、ムン政権の政策を継承する」という考えだ。北朝鮮の非核化についても、イ候補は「段階的同時行動」、すなわち北朝鮮の非核化措置の段階ごとに、それに相応する見返り措置を講じるべきだと主張する。
一方、ユン候補は「北朝鮮の完全な非核化までは国際的な対北朝鮮制裁を維持すべきだ」という強硬論に立つ。ただユン候補は「北朝鮮の完全な非核化以前でも実質的な非核化措置が取れば、国連レベルの制裁免除などを活用した対北朝鮮経済支援は可能だ」という立場も取る。
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