◇市場の急成長で影響力低下
WATCHAは2016年、「WATCHAプレイ」という名前で誕生した。OTTという概念に馴染みがなかった2010年代後半、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)とともに、韓国OTT市場を事実上、二分してきた。海外コンテンツを見るためにはネットフリックス、国内コンテンツを見るためにはWATCHAを見れば良いという認識があるほどだった。
しかし、OTT市場が成長し、「Wavve(ウェーブ)」「TVING(ティービング)」「COUPANG PLAY(クーパンプレイ)」など多様な国産OTTが誕生することになり、WATCHAの長所が色あせるようになった。
ネットフリックスと比較した時、優位だった国内コンテンツは放送会社と手を組んだWavveやTVINGに押され、海外業者とのコンテンツ提携なども競争がはるかに激しくなった。WATCHAで見られたHBOのドラマ「王座のゲーム」などがWavveに移ったのが代表例だ。
その結果、WATCHAの人気はネットフリックスとOTT市場を二分していた全盛期とは比較できないほど大幅に減った。
アプリ・リテール分析サービス「WISEAPP・RETAIL・GOODS」によると、今年4月の1カ月間、韓国人が最も多く使用したOTTアプリのなかで、WATCHAは7位(123万人)に止まった。1055万人のネットフリックスはもちろん、TVING(324万人)、COUPANG PLAY(321万人)、Wavve(307万人)、U+モバイルテレビ(156万人)、Disney+(ディズニープラス、146万人)などにも押された。
◇加入者「数」ではなく「質」に焦点
こうした状況を考え合わせれば、WATCHAのマイナージャンルへの集中は――利用者の「量」より「質」で勝負する――という戦略と読み取ることができる。加入者を増やすことも重要だ。一方で、“忠誠心のある利用者”を増やして解約率を減らすということも不可欠であるためだ。
BLジャンルは大衆性が望めないため、関連コンテンツを次々に繰り出すプラットフォームは多くない。WATCHAは、このように個人の好みを狙った「ニッチ市場」でのポジションを確固たるものにし、長期的な収益の創出を図ろうとしていると見られる。
WATCHAは2月に開かれた「2022年WATCHAメディアデー」で、総合コンテンツプラットフォーム「WATCHA2.0」の青写真を発表した。この時、加入者戦略と関連しては、解約を防ぎ、購読残存率を改善するだけでも売り上げを大幅に高めることができる、と強調していた。
実際、WATCHAは利用者数そのものは多くないが、コンテンツ全体の80%以上が、毎月消費されている、と集計している。加入してみて、好みに合うコンテンツを探しさえすれば、他のOTTより豊かなコンテンツを享受できるわけだ。
こうした戦略は、WATCHAが計画している海外市場進出の拡大戦略にも有効と見られる。WATCHAは2020年に日本でサービスを始め、2030年までに世界で計1億人の加入者を確保するという抱負を明らかにしている。BLなどマイナージャンルは国内より海外でより受け入れられるとみており、WATCHAの戦略が海外進出と相乗効果を出せるという期待も抱いているようだ。
WATCHAのパク・テフン代表は次のように語っている。
「WATCHA2.0は、コンテンツの価値を高め、多様性を広げて個人の好みを満たすというもの。これはWATCHAだけに差別化されている。K-コンテンツをわれわれのプラットフォームに載せて、海外に打って出て、グローバルデータを確保する。これはお金を稼ぐ以上に価値がある」
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