「体を動かして活動するのが従来のスポーツに対する観念だった。しかし、試合をして準備する過程が多くの人に良い影響を及ぼし、競争する姿がインスピレーションを与えるならば、それがスポーツとして最も重要な意味だと思う」
中国・杭州アジア大会eスポーツ金メダリストの「Faker」イ・サンヒョク選手は「eスポーツもスポーツと見なすことができるか」という記者団の質問にそう答えた。イ・サンヒョク選手は「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門で金メダルを獲得し、アジア大会の最高スターに浮上した。
eスポーツは杭州アジア大会で初めて正式種目に採用された。同大会で韓国代表チームは金メダル2、銀メダル1、銅メダル1個を獲得した。
大会が始まる前までは「ゲームをスポーツと同格と見るのが正しいのか」という視線も少なくなかった。しかし、韓国代表チームが連日善戦し、eスポーツに対する国民の反応も肯定的に変わった。
ソウルのAさん(50代)は「息子がeスポーツを見ている時に、大きな声で叫ぶのが理解できなかった。今回のアジア大会で初めてeスポーツ競技をまともに見て、集中する姿に拍手を送ることになった。ゲームをよく知らないが、選手の情熱がそのまま伝わった」と話した。
スポーツ関係者の視線も変わってきている。これまで否定的な意見を持っていた多くの関係者がeスポーツを新たな視点で見始めた。
大韓体育会のイ・ギフン会長は8日、杭州アジア大会の記者会見で「eスポーツもスポーツだと思う」と言い切った。イ・ギフン氏は5年前の国会文化体育観光委員会国政監査時に「eスポーツはスポーツではなくゲームだ」と公言した経緯がある。
韓国選手団のチェ・ユン団長は「eスポーツは非認知種目ではない。直接eスポーツを見て驚いた。うちの子に『ゲームをするな』とは言えない。それほど印象深かった。私には新たな経験だったし、感動した。国民にも注目してほしい」と述べた。
eスポーツに対する認識が変わった背景には、選手たちの真摯(しんし)な姿勢もある。最善を尽くして試合に臨む選手たちの姿に多くの人が惜しみない拍手を送った。
ストリートファイター5部門に出場した44歳のキム・グァンウ選手は、韓国代表初のeスポーツ種目金メダリストになった。1990年代末から格闘ゲームを楽しんできた彼は、会社に通いながらプロゲーマーとして活躍している。10~20代がほとんどのeスポーツ選手団の中にあって唯一の40代選手であり最古参選手だ。
キム・グァンウ選手は記者会見で「ストリートファイター5がアジア大会の正式種目に採用されることになった時、選抜戦を通じてアジア大会に出場することになった時、みんな“国家代表とはいかなるものか”の実感が湧かなかった。だから、アジア大会で強い姿を見せたかった」と語った。
記者会見の途中、母親に関する質問が出ると涙を流した。キム・グァンウ選手は「ゲームをして、いつもたくさんしかられた。でも昨日、金メダルを取ると、母から『お前が大好きだ』という祝賀メッセージが届いた」と語った。
LOL国家代表サポーターとなったリュ・ミンソク選手の母、チョン・ジュヒさんは「息子は国家代表という重みと責任を背負っていたはずだ。それをうまく乗り越え、良い結果を出してくれた。ありがたいし、うれしくて、誇らしい」と話した。
「プロゲーマーになりたいと言われた時、後悔ないよう挑戦してみろと言った。親が未来を決められるものではないので、やりたければ最善を尽くしてみろと。親が信じてやらなければ誰が信じてやるのかという気がした」
チョン・ジュヒさんはこう振り返った。
以前、ゲームが社会問題になり、心配もあった。だが、今はeスポーツが単なる趣味や娯楽を越えて、一つの文化として認められるほど地位が高まった。文化コンテンツとして、よりいっそう高まってほしい――チョン・ジュヒさんの希望だ。
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