「私は医者のガウンを着た“半分看護師”」
韓国の全国保健医療産業労働組合のユーチューブチャンネル(保健医療労組TV)には、こんなせりふが出てくる映像がある。いわゆる「PA看護師」として勤めた人の訴えを取り上げた動画だ。看護師ではあるのだが、半分は医師の役割を果たしており、その存在感は透明人間と同じだという自嘲まじりの言葉である。
◇診療補助人材
PA看護師は、公式には韓国にない職種。1961年に米国内で医師が不足した際、「医師を補助できるグループ」として新設された。「PA」(Physician Assistant)は文字通り「診療補助人材」だ。
米国でPA看護師になるためには、関連免許を取得して専門の教育を受けるなど厳しい課程を経なければならない。有望職種の一つと認識されており、統計によると、米国内では2003年の4万3500人から2013年には9万5583人に増え、2025年には12万7800人を超えるとみられている。
しかし、韓国ではPA看護師を置くことができない。現行法上「医療従事者」の分類にPAが存在しないからだ。医療法第2条によると、医療従事者とは、保健福祉相の免許を受けた▽医師▽歯科医師▽漢方医▽助産師▽看護師――に限定される。PAが医師業務を代行するのは不法行為になる。
それにもかかわらず、多くの看護師が手術や検査施術、緊急状況時のそれぞれの補助などでPA看護師の役割を果たし、こうした人材は大型病院を中心に全国に1万人以上いると推計されている。
◇「医師が減っている」
PA看護師が表立つことなく存在する理由は何だろうか。
医療界では医師数の絶対的な不足を挙げている。経済協力開発機構(OECD)保健医療統計によると、2019年の韓国の医師数は人口1000人当たり2.4人(漢方医含む)でOECD加盟国の3.4人より少ない。
ある病院の胸部外科専門医は「外科のような診療科は避けられる傾向が強く、医師が減っているため、PAのような看護師の存在に頼らざるを得ない状況だ」と訴えた。
看護師の業務範囲を曖昧に区分していることも理由として挙げられている。
大韓病院協会のソン・ジェチャン常勤副会長は「医療法によると看護師の役割は看護と診療補助だが、診療補助の範囲をどこまで見るのかが曖昧だ。医療行為自体が流動的なので、何が診療補助として可能なのか判断しにくい場合が多い」と述べた。
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