「マダイ・ホヤ・ホタテはすべて韓国産にかえました」。ソウルで18年間、刺身屋を経営しているシムさん(41)は、2カ月前から日本産の魚を扱わないようにした。
東京電力福島第1原発でたまり続ける処理水を海洋に放出する時期が近づくと、韓国では原産地を尋ねる客が大幅に増えた。「刺身屋は日本産を多く出してきた。これからは味・品質にかかわらず韓国産だけを提供しなければならないだろう」。シムさんはこう見通す。
処理水の放出を控え、刺身屋と水産市場では懸念が強まる。放出で始まる「海産物への恐怖」が長期化するのでは、という不安からだ。
◇「お客さんの心配、大きくならないよう願う」
ソウル市銅雀区(トンジャクク)の鷺梁津(ノリャンジン)水産市場で7年間刺身を商売をしているキムさん(36)も不安でいっぱいだった。「日本産を食べたくないというお客さんが増えている。お客さん自体が減るのではないか、この仕事を続けられるか心配だ」。キムさんはこう言ってため息をついた。
処理水の放出が本格化しておらず、鷺梁津水産市場の商人が体感する売り上げの変化は、まだ大きくない。だが最近、放射性物質の検査の様子がしばしば伝えられ、緊張が高まっている。
「市場には放射性物質の検査に合格した水産物だけが入ってくるので、お客さんの心配が大きくならないことだけを願っている」。キムさんは吐露した。
◇塩使う料理、事前購入・保管の動き
処理水の放出への懸念は、食べ物全般に広がっている。塩を使う醤類や塩辛、キムチからカタクチイワシ、ワカメなどを事前に購入して保管しようという動きも一部で出ている。
会社員のキムさん(37)は処理水について「本当に健康に影響がないか確信できない。最近は食堂でも原産地をより注意深く見るようになっている」と指摘する。
全国の天日塩生産量の80%以上を占める新安郡(シナングン)では、キムチ漬けシーズンでもない真夏に、突然の塩の値段が引き上げられた。
今月8日、新安郡水産業協同組合直売場は新安天日塩2021年産20㎏価格を2万5000ウォンから3万ウォンに引き上げることを決めた。
新安郡関係者は「人件費引き上げの影響と今夏の梅雨に備えた決定」としながらも「日本の放出決定以後、塩の価格が急激に上がり、心配だ」と明かした。
処理水の放出が消費者物価に影響を及ぼす可能性も高くなった。
流通業界関係者は「放出の懸念が高まり、卸売市場で塩を買う動きが始まっている。市場に供給された量が不足すれば、消費者価格が上がる可能性もある」と見通した。
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