
作家は、現代人の些細な日常生活で繰り広げられる出会いと別れについての話を伝える。10代から60代までの登場人物が、日常で経験する出会いと別れの多彩なプロセスを、五感を通して表現した。
ユ・エスクが追求する真の価値は「愛」だ。しかし、作品で多様な人物と事件を通してわかることは、人よりも、重要になった現代社会の欲望だ。
「希望」がいつから「欲望」という言葉に置き換わったのかわからないが、人々は欲望に駆られることをためらわない。
現実的な問題を前にして過去の選択を後悔するが、その後悔を忘れるために、また別の欲望に耽る。小説の中の主人公たちは、愛した人を懐かしんだり、新しい相手を探して徘徊したりする者たちが、かろうじて世の中を耐え忍ぶさまが描かれる。
私は自分の憂鬱な感情をはねつけることにした。
別れとは、ただ、いくつかの慣れ親しんだ習慣を変えることに過ぎない。週末に一人でぶらぶらすること、映画を一緒に見に行く友人を物色すること、そして携帯電話としばらく敵対関係に置かれることなどを別にすれば、それほど絶望的なことでもない。
新しい扉が開く合図でもあった。
(チャプター「私のバナナ缶詰」より)
愛が発泡スチロールのように軽くなった時代だ。
それにもかかわらず、出会いは別れを前提にその意味が深まり、別れとは新しい出会いを通じて関係性の本質的な意味を刻印する効果があることをこの本は教えてくれる。
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