中国が韓国国民に対する短期ビザ発給を中断したことで、半導体業界が中国事業に及ぼす悪影響に神経を尖らせている。今後も中国発の地政学的リスクがますます大きくなると予想されており、対策の必要性が叫ばれている。
韓国の主要半導体企業は最近、韓国人に対する中国政府の短期ビザ発給中断措置が事業に及ぼす影響を調べ、動向を注視している。
◇生産ラインの効率低下を懸念
現在、中国内でサムスン電子は西安・蘇州工場を、SKハイニックスは無錫・大連・重慶工場を運営している。ここに派遣される韓国人職員は短期ビザではなく180日以上の就職(Z)ビザを発給されており、今回の措置による影響を受けることはない。
問題は一般(S2)・商業貿易(M)ビザだ。中国では、長期駐在ではなく3~4カ月の短期出張の場合、通常このビザを発給されるが、中国政府の今回の措置により、発給が阻まれている。半導体産業では中国国内の生産ライン修理などのための短期出張が多い。
業界は、長期化する場合、半導体生産ラインの稼働率が落ちることを懸念している。
コンサルティング業者「ヨルインテリジェンス」によると、サムスン電子はNAND型フラッシュメモリー生産量のうち38%を中国で生産し、SKハイニックスもDRAM(50%)・NAND型フラッシュメモリー(25%)の中国での生産の割合が高い。
特に、今回の中国政府の措置は防疫目的ではなく、報復の性格が大きいという点が懸念される。米欧も中国人旅行客に対する防疫を強化しているが、中国政府は日本や韓国に対してのみ厳しく対応した。
このため防疫は単にトリガー(引き金)だったとみることもできる。実際にはこれまで「CHIP4」(日本、韓国、米国、台湾)など、米国中心の半導体サプライチェーンに参加した日本や韓国に対する報復という解釈が出ている。
◇過去にも「限韓令」
中国は2000年にも韓国政府が中国産冷凍ニンニクに関税率を引き上げると、韓国産携帯電話・ポリエチレンの輸入を中断した。
2016年にも最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」を配置すると、韓国文化商品・家庭用品の輸入を禁止する「限韓令」を施行した。
ある分野における対立が、全く異なる産業に対する報復につながったのだ。
業界は今後、米中対立が深刻化すると予想される状況で、今回のように地政学的リスクが半導体産業に大きな懸念材料になりかねないという点を深刻に受け止めている。
ある関係者は「日本や台湾は半導体サプライチェーンで米国側に立ったが、韓国はまだ中立にある。韓国が完全に米国側に立たないよう追加報復や、より強力な措置が交渉カードとして浮上する可能性もある」と懸念する。
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