
米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が台北で開催された「COMPUTEX 2025」で、AIスーパーコンピューターを大規模に構築し、台北北部にシリコンバレー本社と匹敵する規模の新社屋「コンステレーション(Constellation)」を建設すると電撃発表した。
表向きには台南出身であるフアン氏の“郷土愛”にも見えるが、その裏には地政学的な思惑とグローバルな利害再編という複雑な戦略が隠されている。
NVIDIAのこの決定は、シリコンバレー中心のビッグテック依存から脱却し、より多様な顧客層を取り込もうとする戦略転換と見る向きが多い。特に昨年以降、マイクロソフトやグーグルなどの“脱NVIDIA”戦略に対抗する動きとも捉えられている。
AI産業の中枢が台湾に移るということは、産業構造の地殻変動を意味する。これまでのAIイノベーションは、米国ビッグテックとNVIDIAの協業によって牽引されてきた。しかしフアン氏は、その枠組みを超えて、世界中の政府や企業に直接AIインフラを提供する「フルスタック・コンピューティング」の構想を掲げている。
NVIDIAが台湾を選んだ理由として、フアン氏の出身地であることに加え、台湾が世界的なAIバリューチェーンの要所であることが挙げられる。
台湾には、世界最大の半導体受託製造企業TSMC、AIサーバー分野で世界1位の鴻海(Foxconn)、アプリケーションプロセッサで世界シェアトップのMediaTekが揃っており、設計から生産、パッケージング、サーバー構築まで一貫して対応できる産業基盤を有している。
こうした地殻変動の中で、韓国は新たなチャンスを模索する必要がある。
フアン氏はCOMPUTEX 2025でSKハイニックスの展示ブースを訪れ、「GO SK!」と叫び、NVIDIAの最新GPU「GB200」に搭載されたHBM(金色の展示板)には「SKハイニックス、サランヘヨ(愛してます)」と書き込んだ。しかし、HBM供給元としての存在だけではAIエコシステムにおける主導権を握るのは難しい。
今後、NVIDIAが台湾企業との結束を強化していく中で、韓国企業が主導権を確保するためには、メモリー強国としての立場から一歩進み、「システムメモリー=非メモリー半導体」分野での競争力を育成する必要がある。
これには、サムスン電子のファウンドリ強化や、システム半導体育成、AI・半導体専門人材の育成など、総合的な国家レベルのアプローチが不可欠だ。単なる技術開発支援にとどまらず、産業構造そのものをAI主導の未来型産業へと再編する覚悟と実行力が問われている。
AIの“地殻変動”は既に始まっている――韓国がそこにどう対応するかが、次の産業覇権を決定づける分水嶺となるだろう。【news1 キム・ミンソク記者】
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