2024 年 10月 18日 (金)
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[KWレポート] BTS兵役論議とK-カルチャー経済学 (7)

交錯する青年たち

2030年釜山万国博覧会(EXPO)誘致招致祈願コンサート「Yet To Come in BUSAN」(写真=BIGHIT MUSIC提供)(c)news1

世界的な人気を集め、K-POPのプライドとして活躍しているグループBTSメンバーの入隊決定で、大衆芸術家の兵役特例問題が新たな転換点を迎えた。

若者の一部から、純粋芸術だけでなく、大衆芸術家の兵役特例を果敢に適用すべきだという声も出ている。

一方で、彼らは国家のために活動したわけではなく、歌手としての活動をしたに過ぎない。そんな彼らに対して兵役特例を適用すれば「公正性」という重要な価値を害する――という意見もある。

◇資格基準がない「大衆文化芸術家」

現行の兵役法は、大統領令で定める芸術・体育分野の特技を持つ者として、文化体育観光相が推薦した人を芸術・体育要員に編入できるよう規定している。しかし、BTSのような大衆文化芸術家に対しては、こうした資格基準がない。これに対し、大衆文化界を中心に、国威宣揚をしたK-POPアイドルなど芸能人にも兵役特例を付与するための法的基準を設けなければならないという主張を繰り返し出ている。

兵役特例の拡大に賛成する側は、BTSなどが大衆文化の国家代表格として国威を宣揚しており、兵役による経歴の中断は、国家的損害だ、という考えだ。文化交流を通じて成し遂げる国威宣揚こそ、自主国防にも役立つという理屈だ。

陸軍満期の除隊者である公務員(29)は「国防力は必ずしも戦争で勝つことだけを意味するわけではない。BTSのような大衆芸術家が稼ぐ外貨は結局、税金につながり、国と国の文化交流も拡大する。こうしたことが国力を育てるのだ」とみる。

軍隊の人員だけを計算すべきではない。銃、刀を持って軍隊にいることがどれほどの実益につながるのか――これを確かめるべき時代が来ているという見方だ。そのうえで「サッカーのドロクバ選手は祖国コートジボワールの内戦を止めたことがある。ワールドカップの生中継の際、カメラの前で戦争を止めてほしいと訴えた。長期的には国力の強化につながる」との考えを明らかにした。

アラブ首長国連邦ドバイで開かれたK-POPコンサート(c)news1

◇大衆芸術家だけ特例排除は「不公平」

純粋芸術家ではなく、大衆文化芸術家だけに制限を設けるのは不公平だという意見もある。

軍未畢者(クンミピルジャ=兵役義務を果たしていない男性)の大学生、ソル・ジェヒョクさん(19)は次のように語る。

「すでに韓国はスポーツ選手、クラシック音楽家に対して、ある程度の成果を上げれば兵役を免除している。大衆芸術家だからといって除外する必要はないと思う。大衆文化の中でも、どれだけの成果を出せばよいか、その基準を明確にするなら、公平性の問題もないだろう」

兵役を済ませたキム・ミンソンさん(26)は「ビルボード1位と非人気五輪種目の銅メダル獲得のどちらかを選ぶなら、前者の方がはるかに達成するのは難しいのではないか。兵役特例を受ける宗教信者もいる。これも不公平ではないか。それに比べれば、BTSのような芸術分野で業績のある人に免除という恩恵を与えても差し支えないと思う」と言う。

高校生のコ・ヨンゴンさん(18)も次のような感想を持つ。

「大衆文化は、たとえ長い時間をかけて築き上げられたものではなくても、多くの人の交流を通じて作られたものであり、むしろ時代像と社会像を盛り込んでいる。この点で立派だと思う。韓国社会は大衆文化の功績をもっと評価する必要があり、大衆芸術家の兵役特例がその一つになり得る」

◇「国家の義務、年俸で決まるのか」

一方で、大衆芸術家の兵役特例に反対する若者は、巨額を得ている大衆芸術家に兵役特例まで与えるのは「不公正」だと認識している。

陸軍第2作戦司令部を満期除隊した男性(30)は「国会でいつも出てくる兵役特例基準の一つが経済的効果だ。それなら年俸5000億ウォン(約523億円)のRM(BTSメンバー)は軍隊に行かなくてよく、コンビニで働いて年俸2000万ウォン(約210万円)しかない青年は兵役に就けということか。いつから国家の義務が年俸で決まるようになったのか」と憤る。

公正な兵役特例基準作りも難しいと指摘する青年もいた。

空軍を満期で除隊したキムさんは(32)は「いつにも増して公正性が重要視されているが、適切な基準もないまま、世界的に人気を集めたというだけで兵役特例を適用させるべきではない。スポーツ界の結果は公正な規則に基づく大会での成果だ。しかし、文化芸術の人気は、個人の好みによる消費に基づいているため、公正な基準を示すのは難しい」と考える。

会社員のカン・ヒチョルさん(30)も「特定の人・集団のために法律を制定する試みそのものが話にならない。公正の価値に反する。大衆文化芸術家が国家の地位を高め、国富に寄与するので特例を与えるとするならば、企業家もすべて免除すべきだ」との持論を展開する。

国家安全保障の概念と資本主義社会という性格を考えれば、兵役特例をすべて廃止して「免除権」を競売にかける方法が良いと思うとも主張する。「これによって国防省の予算を増額させ、国防先進化に寄与するのがより良いだろう。兵力は『1人』減るが、別の国防力(=予算)を得ることができる」と言う。

大衆文化芸術の目的が国威宣揚にあるわけではないという指摘もある。

陸軍を満期除隊した会社員(28)は次のように強調する。

「BTSの場合、歌手活動をしていて世界的にうまくいったケースだ。わざわざ国威宣揚をするために乗り出したわけではない。仮に自営業をし、その商売がうまくいき、世界的に有名なフランチャイズになったからといって、国が兵役特例を与えるわけではない。オリンピックやアジア大会のように国の名誉を背負っているのと大衆芸術家の場合は違う」

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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