ネットによる情緒的・心理的混乱
韓国で、1990年代生まれの若者を明快に分析した「Kを考える」の著者で作家のイム・ミョンムク氏(28)が注目されています。「20代の論客」として注目を集めるイム氏がMONEYTODAYとのインタビューで語った話をまとめました。(シリーズ4/5)
◇消費が創造的な活動
「上の世代には固定観念があった。文化というのはこうでなければならない、作品はこうでなければならない、と。そのようなことが、コンテンツ消費の障壁として作用した。ところが、1990年代生まれは、自分たちが直接消費主体として乗り出した。『ただ、私が面白いものを見る』といった具合に。それが集合的な力、創発的な力で、新しい秩序を作り出した」
「1990年代生まれの消費者は、無限に近い生産品競争の中で、自分が好きなものが何かを把握した。世論を作り、面白いと言いながら広め、推薦してレビューを書き、消費を続けた。こうして進化生態系を作った。こうした消費自体が既に、創意的な活動だ」
◇追求する価値のない世代
「1990年代生まれの本質的な枠組みは『脱価値』に近い。単純な感覚的面白さに没入する傾向が強い。これは事実上、責任を負うことのない行為だ。自分自身を縛り付ける必要もないのだ。『今日も(特定のメンバーを終始映した動画)チッケム1本を十分に見た』ということだ。これを価値の追求と言うのは難しい」
「自由、個人主義、平等、政治的民主化、愛国などが『価値』だ。日常生活に戻った時は『家族』がいるだろう。これらには義務感がある。莫大な資源を投入し、誠意と努力をもって義務を遂行する。それが価値を追求するということだろう。そこで日常を送る『動力』となる意味を探すのだ。しかし、1990年代生まれには遠い概念だ」
◇K-キーワードはファン
「人々は、自分の人生における意味を周辺で見つけられなくなったので、メディアと政治に感情移入するのだ。政治も事実上メディアに従属した。メディアにとっても分かれ目となった。政治からファンが出たのではなく、ファン行動をする人々が政治に向いたのだ」
「ファンとは、メディアに高度に没頭した環境で、集団行動したり世論集めをしたりという訓練を受けた人たちだ。このような人々が事実上、現在の韓国社会の主流を先導し、世論をリードしているのだ。そこで作られた問題意識と摩擦の構図というものが、社会的領域を拡大し続けながら再生産されている」
◇最も混乱した大韓民国
「情報化から来る混乱は韓国が最も深刻だ。メディアが人々を連結させ、そこで途方もないエネルギーが作られている。だが、人々はそこに流されている。そのようなものを緩衝できるような要素はない」
「西欧社会には地域社会の伝統、教会、労働組合などがある。このようなものが多く解体された状態だが、韓国よりは、まだ多く残っている。そのため、我々のようにメディアに流されない。いわゆるオフラインでの今を生きていくだけの力が、西欧社会にはまだ残っている」
「韓国は当初、そのような基盤があまりにも貧弱な社会だった。むしろそのため、世界最高のインターネット先進国になれた。半面、ネットによる情緒的・心理的混乱のようなものが、はるかに激しくならざるを得なかった」
(つづく)
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