「世界で最も混乱した国、韓国」
韓国で、1990年代生まれの若者を明快に分析した「Kを考える」の著者で作家のイム・ミョンムク氏(28)が注目されています。「20代の論客」として注目を集めるイム氏がMONEYTODAYとのインタビューで語った話をまとめました。(シリーズ3/5)
◇「個人は不安で、混乱せざるを得ない」
不確実な時代――確かなことがない今日を生き、明日をまた迎えなければならない。
2022年にも続いている新型コロナウイルスの感染パンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻が触発した新冷戦構図によって、こうした傾向は世界的に広がり、深刻化している。
個人は不安で、混乱せざるを得ない。
「その中でも韓国が最も混乱した国だろう」。これが28歳の若い論客の見方だ。
1990年代生まれを明快に分析した「Kを考える」の著者、イム・ミョンムク氏によると、BTSをはじめとするK-POPや「イカゲーム」などK-コンテンツは、世界的に普及し、最盛期を迎えている。だからこそ逆説的に「最も混乱した今」を過ごしていることになるというのだ。
混乱の核心に、1990年代生まれが存在する。
幼いころから「競争」に追われ、そのストレスによって、直ちに感覚的楽しさを追求する世代である。「脱価値」を選んだゆえ、自負心を感じさせるようなアイデンティティが必要な世代でもある――というのがイム氏の分析だ。
◇他国に先行事例がない
こういう1990年代生まれ特有の「脱価値化」が、高度な「ファン文化」につながった点にイムは注目する。この「ファン文化」は、K-コンテンツ復興の原動力となる一方で、社会的な摩擦も引き起こしている。
「ファン文化」から生じた摩擦であるため、「部族的な特色」まで持ち合わせるようになり、極端な姿を見せる。そして、この摩擦はジェンダー問題から推察されるように「1990年代生まれ」を越え、全世代に広がる。
イム氏は、韓国のジェンダー摩擦のような問題について、世界的に類例のない極端な状況に近いと診断している。
韓国社会は現在、性別で分けられているわけではない。政治性向別に、甚だしくはインターネットコミュニティごとに分けられ、闘争を繰り広げている。ふとしたきっかけで尖鋭的な摩擦が発生する。みなが神経質になり、怒っているのではないか、と錯覚するほどだ。
問題は、韓国よりも、深刻な状況に陥った国を見つけるのは難しいということだ。他国の事例を通じて問題解決を図れないのだ。結局、われわれが自ら解決方法を探すしかない。
◇供給者ではなく需要側の時代
「K-クッポン」という言葉がある。「度を過ぎた愛国」を指す韓国の言葉だ。最近、蔓延している「K-クッポン」に酔っているわれわれに向けられたイム氏の言葉がある。
「K-コンテンツの供給者には1970年代生まれが多い。(BTSを育て上げた音楽プロデューサー)パン・シヒョク氏(1972年生まれ)もその1人だ。一方で、1990年代生まれは、需要の側としてK-コンテンツに貢献した」
「かつては供給側中心だった。供給者が作り、強い影響力を発揮した。しかし、今はコンテンツがあまりにも多くなった。プラットフォームを通じ、これをすべて消化できないほどだ。こうした時代には需要側が事実上コンテンツを決めることになる。供給側が調整弁を操作しながら統制できる時代ではない」
「BTSが世界的なグループになったのもYouTubeとSNSでたくさん発信したためだ。かつては、放送局の芸能番組を通じて、私たちはアイドルを見なければならなかった。ところが、BTSは自らYouTubeなどのチャンネルを通じて直接ファンと意思疎通をはかり、コンテンツを供給した」
「ファンには音楽やダンスも重要だが、アーティストとの情緒面での相互作用の経験も重要だ。BTSはほぼ初めて、その点に食い込み、グローバルアイドルに成長することができた例だ」
(つづく)
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