MZ世代中心、新たな財テク手段
イチオシの曲が売れれば、大儲け――韓国の若い世代の財テクとして音楽著作権への投資が急浮上しています。これまでは作詞・作曲家や歌手らの“専有物”だった音楽著作権が、一般市民の投資対象に様変わりしました。もはや「音楽は聴くものではない、投資するもの」。著作権ビジネスの現状を取材しました。(シリーズ1/4回)
40代の会社員キムさんは毎朝、出勤の際、ヤン・ヨソプとチョン・ウンジの「LOVE DAY」という歌を聴く。好きな曲ではある。理由はそれだけではない。自分が投資した曲だからだ。先日、音楽著作権取引プラットホームを通じて、この歌の音楽著作権を購入した。
この歌が聴かれれば聴かれるほど、キムさんが受け取る著作権料が増えるのだ。キムさんは最近、ある曲の著作権を売り、20万ウォンほどの差益を得た。
音楽著作権がMZ世代を中心に新たな財テクの手段として急浮上している。世界最初の音楽著作権取引フラットフォーム「ミュージックカウ(Musicow)」は、この1年で加入者が4倍以上増え、月の取引額が700億ウォンを突破した。世界最大のプライベート・エクイティ・ファンド(PEF)運用会社「ブラックストーン(Blackstone)」が、音楽著作権市場に10億ドルの投資を決めるなど、世界的にも音楽著作権が株式・債券・不動産のような投資資産として認められている。
◇音楽著作権取引プラットホーム加入者は1年で4.6倍
関連業界などによると、ミュージックカウの加入者数は2020年9月の15万4000人から昨年10月の時点で71万423人に、1年間で約4.6倍も急増した。1カ月の取引高も昨年9月の段階で708億ウォンと、2020年の年間取引高の339億ウォンの2倍を超えている。2016年に設立された音楽著作権取引プラットフォーム「ミュージックカウ」は、歌手のユン・ジョンシンやソンミ、イ・ムジンらを広告モデルに掲げ、名前を知らせた。
このフラットフォームの最大の特徴――音楽著作権を細かく分けて、普通の市民も簡単にアクセスできるようにしたことだ。最近流行している投資方法の一種だ。それまで作曲家や歌手など、音楽業界の関係者の専有物だった音楽著作権が、一般市民の投資対象として様変わりしたわけだ。
ミュージックカウは原作者から音楽著作権を買い入れた後、会員に分割販売する。音楽著作権の持分を購入した投資家らは、放送やストリーミングサービス、公演などで発生する著作権料を、保有持分によって精算金を受けることができる。
音楽ストリーミング配信サービスMelonやSpotify、YouTubeミュージックなど、音楽アプリケーションなどを通じた音源再生件数が多いほど、配当される著作権料が増える。株式を保有する場合に配当を受けるのと同じ構造だ。また、投資家は音楽著作権の価格が上がれば、持分を他の投資家に売り、差益を得ることもできる。
◇非伝統的な投資、拒否感少なく
音楽著作権市場の浮上は、オンラインストリーミング産業の世界的な成長と無関係ではない。新型コロナウイルス感染のパンデミックをきっかけに、YouTubeやSpotify、Apple、Amazonなどの音楽ストリーミング利用者が急増し、音楽著作権の価値が高まった。
株式や仮想通貨で投資に目覚めた20~30代の若者が、音楽著作権取引市場の成長をけん引している。既成世代に比べ、非伝統的な資産投資への抵抗感が少ないという特徴があると見られる。ファンがアイドルグッズを買うように音楽著作権を購入するケースも少なくない。
投資収益率は初期段階の市場であることを考慮しても魅力的な水準だ。DB金融投資によると、ミュージックカウで販売された音源のうち、年間著作権料1~300位の収益率は5~14%レベル。ミュージックカウが明らかにした2020年の著作権料配当収益率の平均は8.7%だった。1%台に止まる都市銀行の定期預金金利とは比較にならない。
売買を通じて差益を得ることも可能だ。「逆走行」(注目されてこなかった曲が何らかの理由で急浮上する現象)で有名なBrave Girlsの「Rollin’」が代表例だ。ミュージックカウによる「Rollin’」の著作権1株の価格は、昨年2月末の2万5000ウォンから同年10月19日には86万ウォンに上昇した。8カ月で3~4倍以上に跳ね上がったわけだ。
◇著作権料配当vs 相場差益
音楽著作権取引市場に投資するためには、まず著作権料の配当と相場差益のうち、どちらに集中するか選択することが重要だ。DB金融投資によると、音楽著作権料は通常、発売年度で最も大きく、2~3年目に大きく落ち、徐々に安定する。
銀行の利子より高い収益を得たいなら、発売から時間が経って著作権料収入の安定した楽曲の著作権を買収した方が良い。リスクを覚悟してでも、相場差益や高い収益を手にしたいなら、新規株式公開(IPO)と似たオークションに参加したり、発売されたばかりの音源を購入したりするほうが有利だ。「曲に対する確信」があるファンなら「Rollin’」のように「逆走行」を狙って著作権を買い入れるのも戦略だ。
韓国文化体育観光省関係者は、音楽著作権の取引市場について「新しいビジネスモデルなので関心を持って見守っているが、まだ積極的に管理・監督はしていない。どう投資家を誘致し、どう創作者と消費者に恩恵を与えるか、運営方法を多角的に考えている」との見解を示す。そのうえで「最も重要なのは音楽著作権産業が発展するよう市場を誘導すること。その過程で発生する消費者被害などの副作用を防止する。問題が生じれば制度的に補完する」とも強調した。
(つづく)