外交政策の多角化
韓国でユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が誕生して以後、内政や外交、南北関係で新たな動きが始まっています。最新の状況を交え、まとめてみました。(シリーズ4/8)
◇THAADで強硬姿勢
最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の問題においても、ユン大統領の立場は強硬だ。
中国の憂慮が大きい事案であるにもかかわらず、「THAADは北朝鮮の核の脅威に対応するための、国民の生命と安全を守るための主権事項であるため、妥協はあり得ない」としている。慶尚北道(キョンサンブクド)星州(ソンジュ)のTHAAD基地の生活館などの工事にも拍車をかけている。
こうした葛藤がなくはない。にもかかわらず、「韓中両国は相互尊重」という互恵的精神に基づいて、共同の利益を追求しながら協力的関係を構築しなければならない。したがって、戦略的協力パートナーという共感は維持している。
中国は経済協力だけでなく、北朝鮮の非核化において役割を果たせるという点も考慮すべき要素だ。
ユン大統領は先月、韓国を訪問した中国の栗戦書・全国人民代表大会常務委員長(国会議長)と接見し、習近平国家主席の訪韓招請の意思を明らかにした。THAAD問題においてはユン大統領が「韓中関係に障害にならないようにしなければならない」と言及すると、栗戦書氏は「相互敏感な問題」に対する意思疎通の必要性に共感を示した。
◇「戦略的自律性を確保すべきだ」
「この20年間、我々が享受してきた、中国を通じた輸出好況の時代は終わりつつある」。チェ・サンモク(崔相穆)大統領室経済首席秘書官は、ユン大統領が北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する契機に展開した対欧州セールス外交の成果を説明し、こう診断した。「安米経中」(安全保障は米国、経済は中国)という枠組みから、「安米経世」(安全保障は米国、経済は世界)に転換していることを明確にしたものだ。
ユン大統領は欧州首脳らとの会談で、原子力、防衛産業、半導体などの分野でのセールス外交を展開し、これは韓国企業とポーランドの防衛産業輸出契約締結などの成果につながった。
ユン大統領の歴訪セールス外交は続いた。
先月の海外歴訪の際、米ニューヨーク訪問をきっかけに北米地域の7社から11億5000万ドル規模の投資を誘致し、カナダを訪問しては首脳会談を通じて、電気自動車バッテリーなどに必要な鉱物のサプライチェーン(供給網)の協力強化と半導体分野の協力などを約束した。
ユン大統領は歴訪の度にセールス外交を展開するという考えも明確にしている。
国立外交院のキム・ヒョンウク教授は「中国の国内総生産(GDP)は下がっており、新型コロナウイルス感染以後の正常化がいつになるか、どれほど正常化するかわからない状況だ。このような状況で米国側に行くのは当然だと思う」と指摘する。
そのうえで次のように強調する。
「韓国政府も多角化政策をさらに拡大すべきだ。同時に、中国依存度の高い戦略物資に関するビジネスで、政府の支援を徐々に増やし、戦略的自律性の確保に力を注ぐべきだ。中国以外に市場を広げ、労働力の提供を受けるという多角化が必要だ。中国とは敵対的関係ではなく、われわれが重視される戦略を組まなければならない」
(つづく)
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