「XR」で応急処置学び、飛行訓練
◇心肺蘇生法訓練に活用
ソウル・梨泰院(イテウォン)雑踏事故を契機に心肺蘇生法(CPR)の重要性が再び注目されている。従来はCPR訓練をする時、マネキンと動画を活用したが、今は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)など、現実と仮想の世界を融合させて疑似体験を提供する空間を創り出す画像処理技術の総称である「クロスリアリティ(XR)」の実感型コンテンツで、より没入感のある訓練が可能になった。
訓練生はVRヘッドセットをつけて心停止患者の胸部圧迫位置と圧迫の強さ、毎分の回数などを確認しながら応急処置法を学ぶことができる。訓練した後、自動的に提供される評価結果によってフィードバックも受けることができる。
韓国警察庁が10月主催した「国際治安産業大戦」では、2016年に発生した「梧牌山(オペサン)トンネル銃撃事件」がXRコンテンツとして再現された。リアルな3Dサウンドとシネマティックな演出を通じ、当時の現場と事件の深刻性を警察に再認識させた。治安や複合テロに対応する能力を向上させるための訓練プログラムで、伝統的な教育訓練の限界を克服したという評価を得た。
8月に開かれた「国際消防安全博覧会」では、XRコンテンツによる仮想火災現場に消防士が出動する姿が演出された。特に、実際の火災現場で不規則に発生する「バックドラフト(酸素が不足した空間に突然多量の酸素が供給される時、燃焼ガスが瞬間的に発火する現象)」や「フラッシュオーバー(一定空間に蓄積された多量の可燃性ガスが発火点を越えて瞬時に火炎に包まれる現象)」など、致命的な特殊状況をXRで再現し、臨場感を極大化した。
こうしたXR技術は、人々が日常で経験しにくい環境を作り上げてくれる。特に高価な教育装備や、熟練するまで長期間の教育が要求される治安、消防、国防、医療、産業など多様な分野で注目されている。訓練する者の安全確保はもちろん、訓練費用まで節減することができるという長所がある。
韓国情報通信産業振興院(NIPA)が発表した「XRを活用した教育・訓練分野用途分析」報告書によると、危険度や精度が高いほど費用節減効果が大きく▽消防士訓練▽化学事故対応▽警察テロ訓練――など、現実体験が不可能だったり相当な準備期間が必要だったりする訓練で、活用性が高いと分析された。
また、韓国科学技術情報通信省は2020年から公共サービス、産業、科学技術分野に実感コンテンツを融合する大規模プロジェクトを推進し、新市場の創出を支援している。
◇警察庁の対テロ訓練、空軍チーム単位の飛行訓練
科学技術情報通信省とNIPAは、XRの適用効果が大きい公共・産業分野を選定し、産業生産性革新や公共サービスを改善する「XRフラッグシッププロジェクト」を推進する。今年の予算は181億ウォン(約19億円)で、3年間で計531億ウォン(約55億円)を投入する。
このうちITソリューション企業「DKIテクノロジー」が主管する「XR基盤重症外傷処置訓練システム」は、国防省と協力して国軍看護士官学校応急治療センターで実証実験を実施している。これまで重症外傷患者の処置経験を確保するのは難しかったが、今回の実証実験を通じて複雑骨折や貫通傷など、重症外傷処置訓練が可能になり、応急処置熟練度が向上したという評価を得た。
総合文化コンテンツ企業「LOCUS」が主管する「XR基盤複合テロ対応教育・訓練システム」は、警察庁対テロ部隊の熟練度向上のために推進されている。今年1月、警察人材開発院内に訓練コンテンツおよびシステムを構築した。訓練生がテロ鎮圧などの現場経験を積む機会が足らなかったが、システムを通じて団地や商業地などでの現場対応実務能力を養うことが可能になった。
2D/3D空間情報専門企業「D2イノベーション」が主管する「XR基盤空軍統合教育・訓練システム」は、空軍本部(空軍教育司令部)に実際の状況をまねた訓練環境を提供し、チーム単位の協業訓練と飛行団間連動訓練が可能だ。従来は個人中心の単一訓練を中心に進められたため、教官のレベルによって教育水準に偏りがあった。これからはXRベースの訓練を通じて戦闘要員および兵器運用者の任務遂行能力のレベルアップと、事故予防に寄与すると期待される。
一方、化学物質安全院は2019年下半期から「化学事故専門課程」にXR訓練を正規教科として編成し、昨年開庁した新庁舎にXR化学体験施設を運営中だ。韓国電子通信研究院(ETRI)は、火災現場と同じ仮想現実で実際の消防道具を使った消防訓練ができる実感型シミュレーターを開発し、現場実証に乗り出している。
(つづく)
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