2024 年 11月 21日 (木)
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[KWレポート] 韓国メタバース最前線 (10)

遠隔ハプティック技術

韓国電子通信研究院(ETRI)は、従来の触感再現装置の没入阻害要素を解決し、肌に密着してより生き生きとした触覚経験を提供する皮膚付着型テレハプティック技術を開発した(写真=ETRIホームページキャプチャー)©NEWSIS

◇メタバースの完成形は「肌触り」

頭に着用するVR機器だけではない。手や体に着用して「触覚」を遠隔で伝達する技術が開発され、関連機器も出てきている。

映画「レディ・プレイヤー1」でも主人公がグローブをはめて3次元仮想世界である「オアシス」に接続するなど、テレハプティック(実際に物体に触れていなくても仮想で質感を得ることができる)と類似した技術が登場した。

メタのVR、AR事業を担当する「リアリティラボ」は、公式ホームページを通じて仮想世界の中の物体を手で感じられる「ハプティック手袋」の試作品を公開したことがある。約15個のプラスチック膨張式エアパッドが手のひらや指先などに配置されている。

英国のVR機器メーカー「テスラスーツ」も2019年に「テスラスーツグローブ」を発表した。手袋に付着したハプティック(触覚)センサー、生体認識センサーが、利用者の手の微細な動きを把握し、VRに仮想の手を再現する。

韓国VR機器開発会社「ビーハプティクス(bHaptics)」は、振動で肌触りを伝達する「タクトグローブ」と「タクトスーツ」を開発し、今年、世界最大の電子・IT展示会「CES2022」で公開した。タクトグローブをはめてベストを着た後、仮想世界に接続して光線剣を振り回せば、殴られた相手は衝撃を感じる。

韓国電子通信研究院(ETRI)は10月、従来の触感再現装置の没入感を阻害する要素を解決し、肌に密着してより生き生きとした触覚経験を提供する皮膚付着型テレハプティック技術を開発したと発表した。

肌に医療用バンドのようにくっつけて使うテレハプティック技術だ。触覚情報を収集するセンサーと触覚を再現する装置により、実際に物体を触らなくても、仮想で質感を得ることができる。

©MONEYTODAY

◇大きくなるVR・AR市場

ビッグテック企業がAR、VR市場に参入し、関連技術の商用化が加速化し、市場規模も急速に成長している。市場調査会社IDCによると、グローバルXR市場は2019年の78億9000万ドル(約1兆975億円)から2024年には1368億ドル(約19兆円)に、年平均76.9%成長すると見られる。また、市場調査会社カウンターポイントリサーチは1100万台だったXR機器出荷量が今年は3000万台に増加し、2025年には1億500万台に4倍増えると見通した。

ただしVR・AR機器が急速に大衆化するためには「没入感」がカギだと専門家は指摘する。

まず、現状の「頭に使うVR機器」は、画面の動きが滑らかでなければ没入感を感じられず、めまいと乗り物酔いを誘発する恐れがある。その重さも、長時間着用するのに負担になる。

また、越えなければならない問題は「キラーコンテンツ」の不在だ。

VRコンテンツがゲームを中心に形成されているが、VRゲームの利用率は低調だ。韓国コンテンツ振興院によると、この4年間、韓国VRゲーム利用率は5.8%にとどまった。VR機器の普及が加速化するためには、利用できるコンテンツが何よりも重要である。

◇コンテンツで優位を確保

この状況を受け、文化体育観光省はコンテンツとVR・AR技術を結合させる実感型コンテンツ製作のための政策支援を決めた。

韓国政府は2023年までに400兆ウォン(約42兆円)規模の予算を投じ、グローバル実感型コンテンツ市場で優位性を確保するという計画だ。

高い価格も参入障壁だ。「メタクエストプロ」は1499ドル(約20万8510円)で、前作に比べて3倍高い。バッテリー持続時間も2時間程度でしかない。アップルが来年発売すると展望されるARヘッドセット「リアリティプロ」は、より高額の3000ドル(約41万7300円)レベルになると予想されている。市場の初期で、消費者が気軽に財布を開くのは難しい。

ハプティック技術も、完全な商用化を成し遂げるためには、さらに多くの時間が必要だ。例えば、メタが公開したハプティックグローブは、多様なユーザーの手に正確に合わせる必要がある。携帯もできない。

崇実(スンシル)大のイ・ジェホン教授は次のように提言している。

「われわれの現実世界がそのまま仮想世界に再現されるのがメタバースで、VR機器の発展が足掛かりとなる。ただ、通信速度やグラフィックなどをはじめ、さまざまな技術の発展が不可欠だ。また韓国ではメタ、グーグル、アップルなどグローバル企業のようにVR、AR技術を保有できず、海外に依存しているという弱点がある政府と企業の全面的な投資拡大が必要だ」

(おわり)

「韓国メタバース最前線」はNEWSISのオ・ドンヒョン、チェ・ウンス、ソン・ジョンホの各記者が取材しました。

©NEWSIS

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