2024 年 5月 19日 (日)
ホーム経済IT/メタバース 韓国デジタル経済の弱点 (1) 首都圏データセンター入居競争

[KWレポート] 韓国デジタル経済の弱点 (1) 首都圏データセンター入居競争

カカオは2023年の完工を目標に、京畿道安山(アンサン)の漢陽(ハニャン)大学エリカ(ERICA)キャンパスに、超大型データセンターを設立する(c)MONEYTODAY

韓国でデジタル経済の最重要インフラに挙げられるデータセンターが不足している。人工知能(AI)、メタバース、クラウド拡散などでデータの生成・流通・蓄積規模が幾何級数的に増えたためだ。さらに、カカオの通信障害事故以後、企業の二重化(同じ構成の機材を2系統準備することで片方が障害などで機能しなくなっても、もう一方が稼働を続けて全体の停止を防ぐ)の需要も急増した。データセンター不足の原因と余波、改善策を探ってみる。

◇着工もしてないのに「私たち、まず入居します」

「データセンター着工前から主要企業の事前入居予約が殺到します。少なくとも半分以上の入居が予約された状態で着工します」

韓国の「パシフィック資産運用」関係者は、データセンターの需要についてこう語った。

同社は最近、韓国京畿道(キョンギド)龍仁(ヨンイン)の竹田(チュクチョン)と、ソウル・加山(カサン)デジタル団地に、ハイパースケール級(超大型)データセンターを建設している。

同社は投資家から資金を集めてデータセンターを建設する。着工前から青田買いでの入居の予約がかなりある、と明らかにしている。

不動産投資信託(REIT)によって資金を集め、データセンターを設立する米企業「デジタルリアルティ」。今年初めに竣工したソウル上岩(サンアム)データセンターのほか、京畿道金浦(キムポ)に2番目のデータセンターを建設中で、2024年の1次竣工を目標にしている。

韓国デジタルリアルティのキム・ジェウォン支社長はこんな見方を示している。

「韓国でのデータセンター建設は、顧客企業の切迫した要請にしたがって推進されている」

◇供給が追いつかない

韓国で最重要ITインフラであるデータセンターの需要が最近、急増している。非対面サービスの拡大と企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)ブーム、クラウドサービスの拡大で、企業や機関が独自の電算設備だけでは手に負えないほど、ITサービスと処理するデータが急増しているのだ。

この状況を受け、データセンターを確保する競争に火がついた。そのうえ今年10月、カカオサービスの通信障害事故で、企業によるシステム二重化の需要が加わり、需給不均衡がさらに深刻化している。

韓国データセンター連合会によると、国内データセンターは2000年には53カ所、2012年には114カ所、2020年には156カ所と増加傾向を見せ、2025年には188カ所に達するとみられる。

問題は供給が需要に追いつかないという点だ。

特に首都圏地域の商業用外部賃貸、すなわちコロケーション(Co-location)設備は既に飽和状態だ。

データセンター連合会関係者はこう解説する。

「韓国データセンター容量を基準にすれば、70%以上が首都圏に集中しており、これらが国内コロケーションの大部分を占める。非首都圏地域のデータセンターは、主にDR(災害対応)が用途だ。二重化設備などに活用するのが大部分」

カカオは2023年の完工を目標に、京畿道安山(アンサン)の漢陽(ハニャン)大学エリカ(ERICA)キャンパスに、超大型データセンターを設立する。

「首都圏データセンターは既に、機器を収容するための専用ラック(サーバーなどIT設備構築区域)に空きがない。顧客との近さ、管理人材確保の容易さ、非常事態対応のための時間短縮などで利点があるためだ。現在建設中のセンターが稼動する2025年ごろには状況が良くなるだろう。ただ、民間・公共のデジタル転換の需要に応えられない、という状況もあり得る」(同関係者)

忠清南道公州の紅葉道(c)news1

◇所要電力、中小都市の使用量に匹敵

データセンターは一般住宅や商店街と違い、そう簡単には建てられない。

超高圧電力網はもちろん、大規模通信網に予備発電所、非常電源供給装置など設備投資が必要であるためだ。

韓国科学技術院(KAIST)電気・電子工学部のチェ・ジュンギュン教授は次のように解説する。

「通常、データセンター1カ所の所要電力量は、忠清南道(チュンチョンナムド)公州(コンジュ)規模の中小都市の使用量に匹敵する。今の韓国電力の発電・変電設備は、新設データセンターの需要のすべてには対応できない」

電磁波などを心配した地域住民の反対世論もあり、データセンターの拡充を難しくしている。

実際、京畿道龍仁(ヨンイン)・始興(シフン)などデータセンター建設が予定されたところでは、住民の反対世論が本格化している。地方に発電所を建てて送電線を架設することも、過去に起きた慶尚南道(キョンサンナムド)密陽(ミリャン)送電塔問題で見られたように、容易ではない。

この問題は2014年、韓国電力が密陽の4地域を通る送電線・送電鉄塔の建設工事を再開したところ、地元住民が健康への悪影響や財産権の侵害を理由に強く反発、治安部隊と衝突する騒動に発展したもの。

チェ教授は「データセンターの追加の建設が遅れれば、それだけ民間・公共のデジタル転換は遅くなる。国家デジタル競争力に否定的影響が及ぶ恐れがある。それゆえ、供給を増やす総合的対策を模索すべきだ」と訴える。

(c)MONEYTODAY

RELATED ARTICLES

Most Popular