2024 年 5月 13日 (月)
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[KWレポート] 韓国の20代女と男、それぞれの事情 (1)

男女対立をあおる大統領選

ソウルのある大学で就職の掲示板で採用情報をみる学生©news1

「火星から来た男、金星から来た女」。かつてのベストセラーのタイトルが示す通り、男女の立場は同じではありません。一方で、票集めのためにジェンダー摩擦をあおる大統領選挙を美しいとは思えません。就職活動で、互いに差別の被害者だと主張しあう「イデニョ」(20代女性)や「イデナム」(20代男性)らの考えを聞いてみました。(シリーズ1/4)

◇李在明「軍経歴認める」vs尹錫悦「女性家族省廃止」

「就職の際、兵役による加算点がないのなら、服務義務をなくすべきではないでしょうか。正直言って、男だけ2年以上浪費しているわけですから」(ソウル在住の29歳の男性就活生)

「男と違って、女は30歳を過ぎれば就職が難しいと言われています。まだ採用現場では女性の能力よりも、年齢や外見をより重視しているようです」(ソウル在住の28歳女性就活生)

新型コロナウイルス感染の影響で新規採用市場が冷え込む中、就職活動をする20代男女の間の「ジェンダー摩擦」が、大統領選の争点に浮上した。摩擦を解消しなければならないはずの政界が、大統領選で勝つために、むしろジェンダー摩擦に火をつけているのが現実だ。就活生の最大関心事の一つである公共機関の採用基準も新政権のジェンダー政策によって変わる見通しだ。

大統領選候補者ら©NEWSIS

◇「イデナムの票をつかむべきだ」李・尹公約

保守系の最大野党「国民の力」の大統領選候補、ユン・ソンヨル(尹錫悦)氏は今年1月7日、Facebookに「女性家族省廃止」という7文字の公約を掲載した。メッセージの意味をめぐり混乱が起きると、翌日、ユン候補は再びFacebookを通じて「女性家族省の名称だけ替えるのではなく、女性家族省の廃止が正しい」と明らかにした。この公約で「イデナム」の支持率が急上昇すると、ユン候補は3日後、兵役に就いている間の給料として、月200万ウォンを保障するという公約も発表した。

これに対し、進歩系与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補は「男女対立、世代対立をあおるものだ」と批判したが、イ候補も「イデナム」の支持を取り付けるための公約を次々と発表した。イ候補は1月、▽将兵の通信料を半額に引き下げ▽兵役中の青年傷害保険を全国に拡大導入する――を相次いで発表した。

また▽賃金算定の際の軍歴認定義務付け▽予備役訓練期間の短縮▽予備役動員訓練補償費の大幅引き上げ――などを約束した。イ候補は1月にFacebookでこうした公約を公開し「韓国社会が兵役で過ごした時間をまだ軽く見ているのではないかと残念に思った」と明らかにした。

一方、「イデニョ」のための公約は、相対的に物足りないという評価だ。「イデナム」の政治的結集力が強いという認識のためだ。

◇「神の職場」には性差別はないか

韓国政府のジェンダー政策を占う代表的な分野が、公社など公共企業体の採用基準だ。

政府は「公共企業体の運営に関する法律」に基づき、毎年、公共企業体を指定・管理している。多くの公共企業体は2017年に政府が作成した指針に従って「ブラインド採用」を実施している。主要な公共企業体は「面接以前の段階までは志願者の性別、学歴、出身地などがわからないため、特定の性別に偏った採用はない」としている。しかし、ブラインド採用が法律で義務付けられているわけではないことが、限界として指摘されている。

公共企業体が職員を採用する際の性差別を防ぐ制度はまだきちんと運用されていない。政府が2018年にまとめた指針に従って公共企業体は面接受験者の性比を記録・管理しなければならない。

面接段階では性別が明らかにならざるを得ないという点を考慮し、受験者の性比を各企業体が独自で集計するようにしたのだ。

例えば、面接対象者の中では高かった女性の割合が、最終選抜者の中では大きく減ったかどうかなどを確認する。だが、進歩系野党「正義党」のチャン・ヘヨン(張惠英)議員が2021年に公開した資料によると、350の公共企業体のうち43%がこれをきちんと管理していなかった。

企画財政省はこうした指摘を反映して2021年末、「公共企業体採用公正性点検タスクフォース」を立ち上げた。同省関係者は「各公共企業体が受験者の性比を集計しているかなどを点検している。今後問題がある事例が見つかれば措置を取る」と述べた。

一部の公共企業体は、採用が特定の性別に偏らないように、自主的にシステムを運営している。代表例である韓国電力公社は、大学卒業者の公開採用の際、書類選考の段階で男女どちらかの比率が20%に達しないようにしている。同社関係者は「基準を満たさなければ引き続き追加募集をする。ただし書類選考段階に限定されたもので、最終採用時の性比とは関係ない」と述べた。

中小企業振興公団の場合、書類選考の段階で、結婚や出産、育児などを理由に仕事を辞めた「経歴断絶」の女性に加点を与える制度を運営している。

一方、多くの公共企業体は、このようなシステムを導入しなくても過去に指摘された男性中心の採用現象は、これ以上発生しないという立場だ。政府が昨年発刊した「公共企業体均衡人事年次報告書」によると、公共企業体の女性の比率は14年の25.9%から20年の33.3%に高まった。同期間、公共企業体の女性新規採用の割合は42.6%から45.7%に上がった。

ある公共企業体関係者は「採用の際、優秀な点数を取る女性があまりにも多い。男性が相対的に多く選ばれたのは過去の話だ」と話した。

(つづく)

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