「合併相乗効果の低下」業界の懸念
日本でもおなじみの大韓航空とアシアナ。韓国を代表する航空2社の合併に注目が集まっています。韓国公正取引委員会が「条件付き承認」の決定を出し、プロセスは「5合目を越えた」と言われています。現状を取材しました。(シリーズ4/6)
◇見通し明るくなく……
韓国公取委が大韓航空とアシアナ航空の合併を約1年がかりで承認し、買収に向けて動力が生まれた。
大韓航空は2021年1月14日、必須申告国と、5つの任意申告国家に合併の申告を進めた。それ以来、トルコ、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポール、さらに台湾で審査をパスした。韓国公取委の承認により計8カ国・地域から企業合併が許可されたことになる。
現在、必須申告国のうち米国、欧州連合(EU)、中国、日本で、任意申告国で英国とオーストラリアの承認をそれぞれ待っている状況だ。
すべての競争当局の承認を受けてこそ両社の合併が最終的に実現する。
しかし――見通しは明るくない。
まず、EU。航空業界の買収・合併に対し、保守的な立場を取り続けているからだ。
昨年のエア・カナダ(カナダ1位)とエア・トランザット(同3位)の合併にも、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)を傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)によるスペイン3位の航空会社エア・ヨーロッパの買収にも、否定的な立場を繰り返し示して結局、白紙に戻した例もある。
EUはこうした合併・買収が航空業界内の競争を侵害するとみる。その根拠に挙げるのは「回復の可能性」だ。
新型コロナウイルスの影響で航空産業が苦境に立たされ、合併・買収が続く。だがコロナ以降も十分に生存できる航空会社は、EUの判断によって合併・買収の対象とはしない。つまり、単に航空会社の経営が難しいという理由だけで、独寡占を放置しないという立場だ。
ただ、ここで問題がある。エア・トランザットとエア・ヨーロッパが事実上、破産寸前にまで追い込まれたのだ。
スペイン当局は2020年、エア・ヨーロッパに4億7500万ユーロを支援した。スペインの航空会社への支援は初めてだった。カナダ政府もエア・トランザットの合併が白紙化されると、2021年に6664億ウォン規模の金融支援を決定した。
それでもEU執行委は「(新型コロナ以後も)ライバル会社として残る可能性がある」との結論を出した。
アシアナ航空の場合、産業銀行が計3兆3000億ウォンを投入するなど、規模がさらに大きい。だが、不承認の可能性がある。
この案件はEUでまだ正式審査ではない予備審査段階だ。大半の海外競争当局は、買収推進企業が直接提示する案を検討するため、今回の買収が最終的に着地するかどうかは、大韓航空の手にかかっているわけだ。
◇公取委「スロット・運輸権を返却せよ」
見通しを遮っているもう一つの要素が、合併しても、公取委が提示した条件が巨大航空統合会社の足を引っ張る可能性があるということだ。
公取委は合併が競争を制限する可能性があるとみて、条件を提示した。重複路線のうち国際線26・国内線8に対し、国内空港スロットの返却▽国際線11に対しても運輸権の返却を要求▽新型コロナ前の2019年を基準に、運賃引き上げ制限、供給座席数の縮小禁止、サービスの質の維持――などだ。
合併後約10年間、大韓航空はこれを履行しなければならず、公取委はこれを監督することになる。
大韓航空は当初、合併を通じ、二つの航空会社の細かいネットワークに基づき、統合による相乗効果の創出を期待していた。だが、効果が出だしから半減したわけだ。
航空業界関係者がこう漏らす。
「航空産業というものは、外部の変数の影響を大きく受けるものだ。履行の監督委が10年間も、監視に乗り出せばどうなる? 航空会社の経営が自律性を失ってしまう。その結果、統合の相乗効果が弱まる可能性があるのだ」
一方で、こんな見方もある。公取委の是正措置のおかげで、EUなど外国の競争当局の審査を、かえって通過しやすくなったというものだ。
別の航空業界関係者が指摘する。
「韓国の公取委による是正措置は、決して弱いものではない。それゆえ、海外の競争当局も、これを参照して承認することになる。もっとも、航空産業は国家の基幹産業であり、とても重要だ。だから政府レベルで積極的な支援をする必要がある」
(つづく)