公取と大韓航空、M&A審査で攻防
日本でもおなじみの大韓航空とアシアナ。韓国を代表する航空2社の合併に注目が集まっています。韓国公正取引委員会が「条件付き承認」の決定を出し、プロセスは「5合目を越えた」と言われています。現状を取材しました。(シリーズ3/6)
◇公取委委員が3回も会議
どんな大企業の買収・合併であっても、通常は公正取引委員会の一度の会議により承認するかどうかが結論づけられる。多くても2度だ。しかし大韓航空のアシアナ航空M&A(合併・買収)は違った。
両社の合併に「条件付き承認」の決定を下すまで、8人の公取委委員は3回も会議を開かなければならなかった。
異例のケースだ。運賃引き上げ制限など、細部の是正措置水準をめぐり公取委審査官と被審人(大韓航空、アシアナ航空)間で意見の隔たりが大きかったからだ。審議を受け持った公取委でも、合意に至るまで相当の困難があった。
2月22日、韓国政府の世宗庁舎。公取委のチョ・ソンウク委員長は記者団にこう伝えた。
「大韓航空とアシアナ航空間の企業合併による競争制限性を評価するのに特別な異論はなかった。しかし、是正措置において公取委の役割、措置水準、消費者に及ぼす影響などをめぐり、合意点を模索しなければならなかった」
2月9日、M&A審査に関する公取委の全体会議が開催された。この時、話し合いは難航した。是正措置のレベルをめぐって、審査官と大韓航空の意見が大きく異なったためだ。
審査官の主張はこうだ。「M&Aで独占・寡占が発生する路線のスロット・運輸権が返還されるまで、大韓航空は平均運賃を新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年の物価上昇率以上に引き上げてはならない」「運賃の値上げ制限とともに供給座席数の縮小まで制限すべきだ」
一方、大韓航空はこう反論した。「企業合併が完了した時点でも新型コロナが終息していなければ、今の運賃を2019年のレベルに安くしなければならず、負担が大きい」「(運賃や座席数に関する)措置のレベルは度を越している」
出席した8人の委員はこの日のうちに、結論を出せなかった。
通常なら、審議当日に最終結論を下す。委員の間で意見が一致せず、改めて合意に至る過程を「合意の続開」と呼ばれる。ただ、こうしたプロセスが繰り返される例はほとんどない。しかもこのプロセスがその後、2度も繰り返されることになったのだ。
◇条項の例外的追加
その1週間後、さらにその4日後、追加で2度、会議が繰り返された。
結局、公取委が大韓航空側の主張を振り切った。ただ、大韓航空の意見も一部で反映されることになり、「国際線の場合、新型コロナの状況などを反映して運賃引き上げの基準を別に定めることができる」という内容を議決書に盛り込むことになった。
条件付き承認――という最終決定だった。「企業結合の時点に市場状況を検討して反映する条項を例外的に追加した」(公取委のコ・ビョンヒ市場構造政策官)ということになった。
公取委関係者の解説はこうだ。
「航空市場は路線が多数である。供給座席数を縮小する行為を制限しなければ、今後、航空会社が一部の路線座席を減らし、他の路線座席を巧妙に増やすことで、消費者の被害が発生する可能性がある。公取委もこれを念頭に置いて決定を下した」
全員会議では、貨物運送路線の独寡占問題に対しても熾烈な攻防が繰り広げられた。
審査官は「荷主の場合、今回の統合以後、他の航空会社を選択するのは難しい」と判断し、一部の貨物路線に対して是正措置が必要だと主張した。
だが、こうした意見は受け入れられず、公取委は最終的に、貨物路線は「競争制限性がない」と判断した。コ・ビョンヒ局長はこう説明する。
「貨物運送市場について、韓国―北米、韓国―東南アジアの2路線について全員会議で論争があった。ただ、貨物路線が夜間にも運営される特性上、時間に対する敏感さは概して低く、フェデックス(FedEx)、UPSのような特送事業者など競争事業者もいるため、公取委委員らは競争制限性の問題は大きくないと見ている」
(つづく)