カネがない、将来を描けない
韓国のMZ世代で「結婚しない」という選択が増加傾向にあります。結婚に対する価値観の変化に加え、経済面での制約が背景にあるようです。韓国社会における「結婚」はどう変化しているのでしょうか……。(シリーズ4/5)
「私たちの時代には『必ず(結婚)』という言葉がついた。子供たちはもう成長しているので、いまは『やりたいことをやって、ひとりで生きてちょうだい』とよく言う」
2人の娘を育てるBさんはこう言って笑った。
結婚に悩むMZ世代にとって、親の応援や支持は大きな力だ。
「結婚はしない」と口にすれば、父親から「したくないならするな」という言葉が返ってきた。「私がお前たちを食べさせてやるから、好きなことをしろ」とも言ってくれた――女性会社員のホンさん(28)はこう振り返り、「本当に心強かった」という。
女性会社員のチュさん(29)は大学生の時に、非婚を決心したという。
「初めて両親に『結婚しないと思う』と打ち明けた時、とても驚いていた」。親は「自分たちは結婚生活が幸せだと思う。この生活は本当に楽しい。なのに、なぜ娘は結婚しようと思わないのか」という立場だった。チュさんは「両親を悩ませ、心配をかけた」と振り返る。この険しい世の中、娘はどうやってひとりで暮らしていくのだろうか――。両親は不安が先立っていたようだった。
その後、チュさんは人生について悩み抜いた。仕事にやりがいを求め、懸命に準備した。それを一つ一つやり遂げ、そして力強く成長していく姿を見せた。そんなチュさんの姿を両親は見守っていた。「今は私を信じて応援してくれる。そんな思いを感じる」そうだ。
結婚適齢期を迎えた女性Aさん。結婚にはお金がかかると思い、積極的にはなれなかった。そんなある日、弟が結婚の日取りを決めてきた。だが弟は結婚資金が足らずに困っていた。Aさんは結婚をあきらめる決心がついた。
「公務員という安定した職業を持つ弟でさえ、資金繰りに苦労している。そんな姿を見たら、私にはとても無理だと思った。あきらめて、かえって心が軽くなった」
住宅価格は高騰して「マイホーム購入」の夢は遠のく。結婚後の経済状況まで考慮すると、将来を描けない。それゆえ、結婚をあきらめるMZ世代が増える。
ある男性Bさんは最近、交際相手と結婚に対して真剣に話し合ったという。Bさんは裕福ではない。「転職して、努力して、一生懸命がんばっても、その収入で何かを実現することは難しい。彼女が経済的に余裕のある男に出会えたら、幸せになれるだろう、彼女と別れよう……などと、悪い考えばかり浮かぶ」
専門家は、結婚をあきらめさせるのではなく、する・しないを「選択」できるよう社会的基盤を整える必要があると指摘する。結婚という制度から外れ、ひとり暮らしも増える。次第に多様化する家族の形に合わせた社会的セーフティーネットの必要性も声高に叫ばれている。
(つづく)
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