「家族とは、国家以上の束縛」
韓国のMZ世代で「結婚しない」という選択が増加傾向にあります。結婚に対する価値観の変化に加え、経済面での制約が背景にあるようです。韓国社会における「結婚」はどう変化しているのでしょうか……。(シリーズ2/5)
とはいえ、自発的な非婚の裏に、結婚を妨げる社会的要因があることを無視できない。
「家庭を持ち、子供を養うにはお金が必要だ。結婚して子供ができても、育てられなければ子供も自分も不憫だ。お金もないくせに、どうして子供を育てることができるのか」
中小企業に勤める「非婚主義」の男性、キムさん(31)の言い分だ。
女性事業家のユさん(27)は、韓国社会が女性に求める「役割」に言及する。
「結婚によって『妻として』『嫁として』の義務が課せられることに強い拒否感がある。男性より女性に、育児の負担を背負わせる雰囲気が、いまだにあるように思う」
女性会社員のチェさん(25)も同意見だ。
「会社をみれば、育児を理由に自身のキャリアを積めず、会社を辞めていくのは、多くが女性の先輩だ。結婚が女性のキャリアアップにつながるようなことがない」
専門家は非婚主義の原因として「韓国の結婚制度が若い世代に課す規範的義務」を挙げる。ソウル女子大社会福祉学科のチョン・ジェフン教授が言及するのは、韓国社会に残る家父長的家族制度だ。
「女性は妊娠・出産によってキャリアの断絶を経験する。男性は主な所得者になって扶養を負担するようになる。MZ世代の価値観にしたがえば、こうした現在の家族規範は受け入れがたいものだ」
韓神大社会学科のユン・サンチョル教授は、現代が社会的な束縛からの個人が解放されるプロセスにあるとみる。
「韓国で結婚は非常に格式化・制度化されている。家族とはある意味、国家以上の束縛といえる。性別問わず、こうした束縛から個人が解放される過程にあるのだと思う」
非婚主義的な考えは、今後、さらに拡張される。結婚状態を簡単に解消したり、新しい家族の形を築いたり、多様な方法でさらに自由を追求するようになる――ユン教授はこう展望する。
「韓国社会は依然、集団主義的・規範的な意識が強く、それが人々の行動を潜在的に抑制している。国家が制度的、法律的に新しい形の家族を認めたとしても(非婚主義的な)現在のMZ世代の意識は、そう簡単には変わらないだろう」
(つづく)
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